年金資産運用・基礎の基礎 4月から【プライベートアセット再整理】がスタート! 【新シリーズ予告】第0回:プライベート投資の基礎から実践へ橋渡し〜新回答者はラッセル・インベストメントの山浦厚能さん
2022年4月に始まった「年金資産運用・基礎の基礎」シリーズ。これまで株式や債券、為替などの伝統的資産に加えて、プライベートアセットやヘッジファンドなどのオルタナティブ運用について、やさしく広範に解説してきました。連載4年目に入る4月から新シリーズ【プライベートアセット再整理】がスタートします。3年間、毎回懇切丁寧に解説いただいた金武伸治さんに代わって、今回から同じラッセル・インベストメントに所属する山浦厚能(やまうら・あつのり)さんに回答を担当していただくことになりました。今回は新シリーズの狙いや、山浦さんの紹介をさせていただきます。
プライベート投資、対象は幅広く複雑
金武さん、3年間みっちり教えていただき、ありがとうございました。おかげで「新米常務理事」も、何とか他の企業年金の人たちとも年金資産運用について議論ができるようになったと思います。
金武 それはよかったです。読者の方々も、これまでの本シリーズの内容で、実際の年金資産運用への対応力が身に付いたことを実感していただけていれば幸いです。
ただ一方、オルタナティブ運用では、基礎と実践との間にギャップを感じる方も多いのではないでしょうか。その中でも近年脚光を浴びているプライベートアセット投資については、投資対象が非常に幅広く、また複雑であることから、戸惑う場面も多いのではないかと思います。コンサルティングの現場でも、プライベートアセット投資の運用構成や投資計画などについての検討は、伝統的資産などよりハードルが上がります。
オルタナティブ運用の専門チーム
そのような状況では、コンサルタント会社としても、特別な対応が求められるのではないでしょうか。
金武 そうなのです。ラッセル・インベストメントでは、このようなオルタナティブ運用の多様性や複雑性に対応するために、専門的なアドバイスを提供するチームとしてオルタナティブ・アドバイザリー部を設置し、コンサルタント部と協働しながら、お客様のオルタナティブ運用をサポートしています。
そこで今回の新シリーズから、オルタナティブ投資の専門家に登場いただくということですね。
金武 はい。ラッセル・インベストメントのオルタナティブ・アドバイザリー部長である山浦厚能にバトンタッチして、分かりやすい説明に努めてもらいます。新シリーズがプライベートアセット投資に関する理解をより深め、投資判断の一助になることを願っています。

オルタナティブ アドバイザリー部
山浦 厚能さん
伝統資産との対比で特徴や対応を解説
山浦さん、よろしくお願いいたします。
山浦 こちらこそ、よろしくお願いいたします。確かにオルタナティブ投資がポートフォリオに占める割合は年々増加しています。ラッセル・インベストメントでは、オルタナティブ投資に積極的なお客様のニーズに寄り添う形で、いち早く2015年にオルタナティブ運用に特化したコンサルティング部門を組成しました。顧客ニーズの増加に伴いチームも拡大。私自身は2017年に当部に異動して以来、オルタナティブとりわけプライベートアセットを専門としたコンサルタントを担っています。
プライベートアセットへの取り組み状況は、お客様によってさまざまです。これから始めようと検討している段階から、既に成熟したポートフォリオを管理している段階までのグラデーションのどこかに位置するわけですが、まだまだ初期段階のお客様も多く存在します。そこで今回、「プライベートアセット再整理」と題してプライベートアセットの全容を改めて、分かりやすく解説したいと思います。難解に感じられることも多いプライベートアセットですが、各資産クラス(プライベート・エクイティ、プライベート・デット、不動産、インフラ)について極力パブリックアセット(いわゆる伝統資産です)と対比することで、その特徴を浮き彫りにします。
また、どの資産クラスを優先すべきか。そして、投資する資産クラスが決まった場合は、どのようにポートフォリオを構築していくべきか。こういった点でお悩みの方も多くいらっしゃいます。これらについても、弊社がコンサルティングを行う過程で蓄積してきたノウハウを共有させていただき、今後のプライベートアセット投資に役立てていただけるように努めます。
第1回は4月10日記事公開の予定です。どういった内容となりますか。
山浦 シリーズ全体で10回程度の解説を予定しています。第1回では、先ほど触れた「プライベートとパブリックの違い」にフォーカスします。
【解説】山浦厚能
ラッセル・インベストメント
ディレクター オルタナティブ・アドバイザリー部長
2007年、ラッセル・インベストメントに入社。コンサルティング部で主に企業年金を対象に、伝統的資産・オルタナティブ資産の双方を含むポートフォリオ構築や運用会社選定などに関するアドバイスを行った。2017年にオルタナティブ・アドバイザリー部に異動。主にプライベート資産のコンサルティングを担当している。
ラッセル・インベストメント入社以前は、大和銀行(現・りそな銀行)でファンド・マネージメント業務に従事した。
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
【構成・執筆】阿部圭介
J-MONEY論説委員
1980年、朝日新聞社に入社。整理部記者として紙面編集を担当、経済部記者として金融、証券、情報通信などを取材。経営企画室長、大阪本社編集局長、朝日ビルディング社長を経て2022年3月まで朝日新聞企業年金基金常務理事。2022年4月から現職
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