2021年前半の為替市場は、新型コロナウイルスのワクチン接種率に注目した「ヴァクシネーション・トレード」が主導してきた。日本でも5月下旬にようやくワクチン接種が軌道に乗り始め、今後は景況感の急回復によるインフレ懸念の高まりも指摘されている。筆者は、年後半の為替相場には3つの憂慮すべきリスクシナリオがあると指摘する。( 記事内容は2021年6月3日時点)

ドルと円がともに下落した2021年前半の主要為替相場

日本円を中心に為替市場を見ていると意外に聞こえるかもしれないが、2021年前半の主要為替相場は2020年に引き続きドルが軟調な展開となった。その中で市場を主導した中心は、各国の新型コロナウイルスワクチン接種の進捗(ちんちょく)
度合に注目したトレード(以下、ヴァクシネーション・トレード)であった。

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梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

図表1は、ドルの対ユーロ相場、対ポンド相場、Fed(米連邦準備制度)公表の貿易ウエートドル指数(Broad)を、2021年1月2日=100として示したものである。2021年初来、ドルはバイデン新政権に対する政策期待とEU(欧州連合)のワクチン戦略の失敗から、ユーロ対して反発する展開となった。一方、対ポンドは英国におけるワクチン接種の進捗とそれを受けた景況感の回復から、2020年に引き続きドルが下落した。

ただ、4月に入ると英国や米国に比べて出遅れていたEUによるワクチン接種が軌道に乗り始め、これに伴いユーロ圏の景気回復期待が強まり、ドルはユーロに対しても下落を始めた。一方、2021年中、貿易ウエートドル指数はドルの対ユーロ相場と類似した動きをたどった。また、2020年来の動きを振り返れば、新型コロナ禍による市場の混乱に乗じて質への逃避からドルが買い進まれた同年3月を起点とするドル高修正の動きが、2021年前半も継続されたと見ることができる。2021年中、ドルはユーロとポンドに対して2018年4月以来、貿易ウエートドル指数は同年5月の水準まで下落している。

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