低金利下において分配金利回り4%超えと魅力的な水準を保つJ-REIT(不動産投資信託)。機関投資家のパッシブ運用が加速するなか、国内のREIT市場拡大への課題などについて運用会社のトップが語り合った。(記事後援・不動産証券化協会。取材日:2018年12月3日)

出席者
■出席者(写真左から)
ケネディクス不動産投資顧問 代表取締役社長 田島 正彦
ジャパンエクセレント アセットマネジメント 代表取締役社長 小川 秀彦
三井物産ロジスティクスパートナーズ 代表取締役社長 棚橋 慶太
■コーディネーター
不動産証券化協会(ARES) 事務局次長 渡辺 晶

自己投資口の取得と保有不動産の売却

渡辺 機関投資家を取り巻くいまの運用環境をどう見ているか。

田島 国内の機関投資家にとって低金利の厳しい運用環境のもと、J-REITの平均予想分配金利回りは2018年10月時点で4.21%と高水準だ。実物資産に基づく高利回り商品に対する強いニーズが感じられる。海外の運用機関にとってもJ-REITの高いイールド・スプレッドは魅力だ。世界的にグローバルな資金アロケーションがされるなか、ここ1年はJ-REITへの資金流入が継続し、世界のREIT市場のなかでJ-REITがアウトパフォームした。

小川 日本の場合、日本銀行の緩和的な金融政策により急激な金利上昇や円高に転じるリスクは比較的低い。一般的に、J-REITはミドルリスク・ミドルリターンの金融商品の一つと捉えられるケースが多いが、分配金利回り4%は投資家にとって割安感があるといえる。分配金は歴史的に見ても安定的で、日本国債とのイールド・スプレッドから見ても分配金利回りは高い。オフィスの場合、保有物件の稼働率は高く、賃料増額や負債コストの削減などが分配金の成長に貢献している。J-REITの収益率の引き上げには、外部成長と内部成長がある。オフィス全般にいえることは、内部成長は好調だが、外部成長は常に課題だ。

外部成長のドライバーが創出されないとPO(公募)が行えないため、投資家にとっては買いたくても買いにくい状況が続いている。J-REITが魅力的な分配金利回りでありながら、なかなか株価が上昇しないのは、これらが要因ではないだろうか。

東証REIT指数の推移

棚橋 物流施設の場合は内部成長も容易ではなく、分配金を増やすには外部成長にドライバーを置かざるを得ないため、さまざまな施策を打っていく必要がある。最近は、2017年4月から続いていた国内の投資信託からの資金流出が沈静化しつつある。2018年9月に投資信託が買い越し基調に転じたことにより、全体的に底上げしてきている。

多くのJ-REITの資産運用会社が新規物件の取得に頭を悩ませているが、実は国内外の機関投資家を中心に、「REIT価格が割安であれば買い、割高な不動産を売却する」という真逆の議論も展開されている。つまり、自己投資口を購入し、保有物件を売却する方法だ。実際、当社が行った自己投資口の取得と、将来の取得を念頭に置いた物件の売却は投資家から好評だった。

小川 従来、運用の主流はアクティブ運用だったが、世界的にパッシブ運用へ移管する流れが加速している。海外の投資家からは、J-REITの現状61銘柄でも多すぎるという意見すら出ているくらいだ。以前はJ-REITへ多く投資していた地域金融機関は、監督官庁からリスク管理強化指導が入ったあとはETF(上場投資信託)を選ぶ傾向が強まった。当社のようにアクティブ運用の投資家が投資してくれるように力を入れている側からすると、差別化やパフォーマンス向上に切磋琢磨しているJ-REIT各社をワンセットに指数として売り買いされる現状には思うところがある。

田島 パッシブ運用への流れもあり、インデックス(指数)の重要性がより高まっている。例えば、オランダの大手年金投資家の場合、特定の指数に組み入れられない限り、そもそも投資対象にならないと聞いた。

棚橋 個別銘柄への投資から、パッシブ化、指数化という流れのなかでは、各ファンドが独自性を出すことが非常に難しくなってきている。米国はとくにパッシブ化が顕著で、AIによるビッグデータ分析の運用モデルが進化し、既存のファンドマネジャーのパフォーマンスを上回る事例も出てきている。例えば、株主構成比率で1%に満たない年金基金のように少人数体制で運用される機関では、多くの不動産を実査することは難しい。効率性を考えて専門家に任せる、あるいはETFを選ぶといった方向に進んでいるのかもしれない。

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