豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化にともなう財源確保のため、大学にとって資金運用は中長期の財政基盤を支える重要なテーマとなっている。千葉商科大学は2018年に日本株ESG(環境・社会・企業統治)ファンドへの投資を開始し、学校法人の資金運用にESGの視点を取り入れてきた。創立以来の教育理念と資金運用をどのように結びつけているのか、千葉商科大学教授の伊藤宏一氏に聞いた。
2018年、総額10億円を日本株ESGファンドに投資
資金運用に対する基本的な考え方は。

学校法人千葉学園
資金運用委員会委員長
金融経済教育推進会議委員
伊藤 宏一氏
千葉商科大学の源流は、大正期に創始者である遠藤隆吉博士が設立した巣鴨高等商業学校にさかのぼる。当時は商売が活発化する一方で、不道徳な商慣行も蔓延していた。そうした時代背景のもと、「商業は人と人との交流であり、相手を信頼し、約束を守る倫理がなければ成り立たない」との考えから、高い倫理観を備えたリーダー「治道家(ちどうか)」を育成することを教育理念に掲げてきた。
「経済性と高い倫理観を両立させる」という考え方は、ESGの文脈とも重なる。学生に商業道徳の重要性を説きながら経営や金融を教えているからこそ、大学自身の資金運用においても、収益性だけでなく倫理性や社会的意義を投資判断の軸の1つにしている。
資金運用で得た収益は、①校舎や教育設備の充実、②学生への奨学金の原資や教育研究経費への充当、③教職員の退職金への充当など、大学経営を長期的に支えるための資金と位置づけている。
有価証券運用の歴史は。
2008年、学内に資金運用委員会を立ち上げた。それまではもっぱら銀行預金で運用していたが、ペイオフ解禁(預金等全額保護の特例措置終了)により、銀行預金であっても必ずしもリスクフリーとは言えなくなったことが背景にある。
当初は、定期的なインカムゲインの確保を目的とした債券投資が中心で、このやり方をほぼ10年間踏襲してきた。しかし、長期にわたって低金利政策が継続し、債券運用だけでは十分な収益確保が難しくなったため、運用方針を「インカムゲイン確保」から「長期的な資産拡大」へ転換した。
他方で、本学では2017年より、学長プロジェクトとしてSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みを進めていた。世界的にもESG投資が拡大していたことも後押しとなり、本学のSDGs行動に貢献する具体的戦略の1つとして、ESGの観点で銘柄を選別した日本株ファンドへの投資を2018年5月に開始した。投資額は総額10億円。日本株を対象にESG投資を行った事例は、国内の大学で初めてだったと認識している。その後外国株ESG投資も行なった。
また、同じESGの観点でJICA債へも投資したが、これは他のいくつかの大学でも行われている。

2026年度からオルタナティブ投資をスタート
現在の運用状況は。
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