• 2022年7月後半以降に生じたドル円相場のやや急激な調整
  • 既に表れていた米景気後退とインフレ終息の兆候
  • コロナ以降の米国経常収支悪化を伴うドルの独歩高
  • インフレ終息後の米国の日本化と世界的な国際収支危機

2022年7月後半以降に生じたドル円相場のやや急激な調整

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

ドル円相場は、2022年7月14日に付けた高値139円40銭から8月2日の130円40銭まで、約20日間に6.9%のやや急激な調整を示した。

同年7月22日に発表された米国7月のPMI(購買担当者景気指数)が、2020年6月以来初めて好不況の分水嶺となる50を割り込み、同28日発表の米国の第2四半期実質GDP(国内総生産)がリセッションを示す2期連続マイナス成長となったことがその背景である。

また、2022年8月3日に実現したペロシ米下院議長による訪台が、リスクオフの円買いを誘った。さらに、ドル円相場は、同年8月8日に135円55銭まで反発したものの、同10日に発表された米国7月のCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回ったことで、再び132円04銭まで下押した。

既に表れていた米景気後退とインフレ終息の兆候

米金融市場では、10年物米国債利回りが、2022年6月14日の3.49%をピークに、既に同年8月1日は2.60%まで89ベーシスポイント下落していた。また、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、これに先立ち、同年6月8日の1バレル121.94ドルから、8月4日には同91.29ドルまで33.6%の下落をみせていた。

さらに、基調的なインフレ圧力を示す米国のコアインフレ率(食品とエネルギーを除くCPI)は、2022年3月の前年比6.4%から同年6月には同5.9%へ下落し、同年7月も前月と同じ伸び率となった。

コロナ以降の米国経常収支悪化を伴うドルの独歩高

新型コロナウイルス禍対策による米国の巨額の財政支出がもたらした消費と輸入の急増によって、米国の財・サービス貿易赤字は、2020年2月の405億ドルから2022年3月まで1077億ドルまで急増した。このような中、米国の景気拡大とインフレが、これまで米長短金利の上昇を通じて、ドルの独歩高をもたらしてきた。

10年物米国債利回りは、2020年4月の0.66%から2022年6月3.14%まで、実効FF(フェデラルファンド)レートは同0.05%から2022年7月の1.68%へ上昇し、名目実効ドルレート(Broadベース・2006年1月=100)は、2020年1月の115.3から2022年7月122.8へ7.5%上昇した。

【図表】米国の実質短期金利と名目実効ドル相場

米国の実質短期金利と名目実効ドル相場
出所:米連邦準備制度

インフレ後の米国の日本化と世界的な国際収支危機

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