2022年4~6月期の実質成長率は年率2.2%のプラス成長

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

2022年8月15日に公表された2022年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率で2.2%増加した。

新型コロナウイルスの感染一服を受けて人々の外出行動が回復し、個人消費が前期比1.1%増と1~3月期の0.3%増から加速した。設備投資は同1.4%増と2四半期ぶりにプラスに転じた。

2021年度補正予算に計上された「防災・減災、国土強靭化」に関連する工事が進捗したことを受けて、公共投資も6四半期ぶりに増加した。

物価高と供給制約の長期化が景気の本格回復を阻む要因

ただ、ゼロ成長だった2022年1~3月期からのリバウンドを考慮すると、4~6月期のGDPはやや力強さに欠ける回復だったといえる。

筆者もフォーキャスターとして参加しているESPフォーキャスト調査によると、1~3月期GDPが公表された直後となる6月調査時点の4~6月期GDPの予測値は、前期比年率で3.6%のプラス成長が見込まれていた。

【図表】実質GDP水準の実績と予測
実質GDP水準の実績と予測
出所:内閣府資料、予測は信金中央金庫

当初の想定に比べて反発力が弱かった要因として挙げられるのが物価高だ。ガソリンや電気料金の上昇に加えて、購入頻度の高い食料品の値上げが相次いだことで、家計の節約ムードが高まったとみられる。

半導体不足など供給制約が長期化していることも景気の本格回復を阻む要因となっている。2022年4~6月期は上海のロックダウンによる部品不足も加わり、自動車や産業機械メーカーを中心に減産を余儀なくされた。日本の主力輸出品である自動車生産の回復が遅れていることが輸出全体の足を引っ張っている。

当面も景気回復テンポは鈍く、2022年度の経済成長率は1.6%にとどまる見通し

2022年7月半ばから新型コロナウイルスの感染者数が急増している。2021年夏に比べて重症者数は少なく、新規感染者数の急増が示唆するほど深刻な状況ではないが、外出行動を手控える人も増え始めている。感染拡大のタイミングが、旅行・レジャー需要がピークとなる夏休み期間と重なったこともあって、7~9月期は個人消費の回復にブレーキがかかるとみられる。

2022年度の実質成長率は1.6%と前回のGDP統計公表時に想定した2.3%から下方修正した。新型コロナウイルスの感染再拡大で個人消費が下押しされるほか、供給制約の長期化に伴う生産回復の遅れと世界経済の減速で輸出が伸び悩むとの見方に変更したためである。政府も年央試算で2022年度の成長率見通しを3.2%から2.0%に下方修正したが、その水準にも届かないと予測している。

なお、実質GDPは、2022年4~6月期にコロナ前(2019年10~12月期)の水準を上回ったが、同期は消費税増税に伴う駆込み需要の反動で下振れしていた時期であり、コロナ禍の落ち込みを取り戻したわけではない。コロナ禍前の正常な経済活動を取り戻すにはなお時間を要する見通しである。

実質GDPが、コロナ禍前の平均的な経済活動レベルと考えられる2019年(暦年)の水準を上回るのは2023年7~9月期と予測している。