消費税を巡る2つの経験則

大和総研
金融調査部 主任研究員
長内 智

日本の金融・経済動向の先行きを展望する上で、今最も注目される国内イベントは、2019年10月に予定されている消費税率(8%→10%)の引き上げであろう。政府が、2019年6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針)に消費税率の引き上げを盛り込んだことで、現在、増税が実施される確率がかなり高まっている。そこで、以下では、過去の消費税の導入・増税における経験則を概観した上で、今回の消費増税による影響について検討することとしたい。

過去の消費税の導入・増税と日本経済・金融市場については、①国内景気の予想以上の悪化、②為替市場における円安進行、という2つの経験則が存在する。

国内景気に関しては、まず、1997年4月の消費増税後に、日本経済が景気後退に陥ったことが挙げられる。当時を振り返ると、景気後退の要因としては、増税より、その後のアジア通貨危機や日本の金融システム不安の影響の方が大きいと評価できる。ただし、景気の「山」が増税直後の1997年5月に設定されたこともあり、増税が景気後退のきっかけになったと見る向きも少なくない。

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