英国は2020年1月31日、EU(欧州連合)を離脱した。Brexit(英国による欧州連合からの離脱)は、日本の経済・金融および企業活動にどのような影響を及ぼすのか。富士通総研 経済研究所のマルティン・シュルツ氏に聞いた。

Brexitは日本の「ウェイクアップコール」。経済成長著しい東欧に進出するチャンス

日本企業の対欧州戦略の転換点

富士通総研
経済研究所 上席主任研究員
マルティン・シュルツ氏

2016年のBrexit直後、金融市場はどのような動きを見せたか。

シュルツ 同年の米国大統領選挙に現トランプ大統領が勝利を収めたこともあり、世界中が混乱に包まれたような感覚があった。市場や世論を賑わす事柄が立て続けに起きたことから、2016年は世界中に驚きをもたらした特別な年といっても過言ではないだろう。

そこで、私も含めて世界中の企業や専門学者は、Brexitがもたらす影響についてこぞって研究を行うこととなった。当時は皆悪い方向へ進むのではと不安や懸念を膨らませており、いまだそういった論説を持つ方もいるとは思うが、私は決してBrexitを否定的に捉えていない。日本にとってのBrexitは、企業のさらなる飛躍のための「ウェイクアップコール」である。既存の日本の欧州に対する企業戦略への転換点となった出来事と位置づけている。

日本にとってBrexitが良きチャンスと考える理由は何か。

シュルツ Brexit前の一般的な日本企業の対欧州戦略とは、英国のロンドンが中心だった。多様なマーケットが混在する他の欧州各国へ投資をする際も、ロンドンをすべてのゲートウェイとしていた。また、日本企業が欧州現地へ派遣する人材は、ロンドンへ駐在することが多く、企業の進出拠点もロンドン周辺に据えているケースが多々見られた。

前述したように、実は欧州と一口に言ってもマーケットは様々だ。そのため、英国のみに注力していたこれまでの日本は非常に好機を逃している。特に東欧は国の成長率・消費ともに伸長が著しい。Brexit前の日本は、欧州のポテンシャル領域に手を出さず、チャンスを活かし切れていなかったと言えるだろう。

実は、欧州は日本にとって中国と同等レベルで重要なマーケットである。日本政府のアベノミクスの成長戦略では海外投資を積極的に実施していたのだが、アジアと欧州の投資比率はほぼ同程度だ。中国は値動きの乱高下が激しい分、欧州マーケットの安定的なポジションは重要であると考えられる。従来は英国重視であった日本も、Brexit後は、他の道を探る必要があるだろう。

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