J-REIT(日本版不動産投資信託)は2021年9月に誕生20周年を迎える。2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大で急落したJ-REIT価格は緩やかに上昇中だ。機関投資家のポートフォリオ構築において、J-REITや不動産投資はどのように位置付けていくべきか。連載「Asset Watch J-REIT編」の最終回となる第5回は、三井物産連合企業年金基金 常務理事の小倉邦彦氏に、多くの年金基金が採用している不動産投資のアプローチやJ-REIT市場の展望などを聞いた。

年金基金の不動産投資は私募REITが主体

年金基金をはじめとした長期運用志向の機関投資家は、流動性をそれほど重視しなくてもよいことから、不動産のエクスポージャーをとる場合はJ-REITではなく流動性は劣るが価格の変動が小さい私募REITを選ぶケースが多いといわれる。

小倉 邦彦氏
三井物産連合企業年金基金
常務理事
小倉 邦彦氏

三井物産連合企業年金基金 常務理事の小倉邦彦氏は、「日本で私募REITが誕生したのは2010年11月。リーマン・ショックの2年後のため、J-REITと異なりマーケット急落の洗礼を受けたことがない。この間オフィスビルなどの賃料は右肩上がりで推移しており、多くの年金基金は国内私募REITでキャピタルロスを経験したことはないだろう。ここ数年の主要私募REITのインカムゲインは年4%程度、キャピタルゲインは年2~3%程度といったところか。トータルリターン6~8%程度と考えると、私募REITの募集に年金基金などの機関投資家が殺到するのもある意味当然といえる」と解説する。

では、年金基金は一切J-REITに投資していないのか。小倉氏は「数は少ないがJ-REITを直接保有している年金基金もあるし、一部のマルチアセットやバランス型運用にはJ-REITが組み入れられているケースもある。当基金の現在のポートフォリオは、オルタナティブ資産25%のうち私募REITが10%を占める。マルチアセット10%の中にもわずかではあるがJ-REITが含まれており、両者を合わせた不動産のエクスポージャーは年金基金の中では比較的高いといえるだろう」と明かす。

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