止まらない緩和姿勢

美和 卓
野村證券

チーフエコノミスト

美和 卓

日本銀行の金融政策決定会合後に行われる植田和男総裁の定例会見においては、しばしば「円安が進行しているのに、なぜ利上げに動かないのか」との質問がなされる。2025年春以降のドル円レート上昇(円安進行)は、米日の名目金利差(米-日)が縮小するなかで進行してきた。この現象を合理的に解釈する一つのカギは、実質金利差の変化である。

もし、日本のインフレ期待が米国に比して大きく上昇し、名目金利差の縮小に逆行して日米の実質金利差が拡大しているために円安が進んでいるとすれば、「日本の金融政策がインフレ期待の加速を容認するほど過剰に緩和的になっていることが要因」と解釈できなくもない。事実、日本の実質金利が現状マイナス圏にあり、金融政策が緩和的である点は日銀もかねてから認めている。また、それを徐々に是正すべく利上げを継続することが適切であるとの判断も示している。

一方で日銀の政策決定会合は、高田創審議委員が主張するように「物価安定目標がすでに達成されており、それに呼応して緩和的な金融環境を解除しても構わない」との判断には総意として至っていない。それゆえ、政策金利が依然として緩和的な水準に維持されているのも事実である。このような日銀のロジックを踏まえると、円安に対応して利上げが必要と判断されるのは、円安進行がインフレ基調を押し上げ、物価安定目標実現を早めるとの評価が確定的になされた場合と考えられる。

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