日本の短期金利市場は「死んでいる」

低金利はいまだに解消の見込みが立っていません。

太田 2008年秋のリーマン・ショック後、今日では、日銀は政策金利の誘導目標を0 ~ 0.1%とする包括金融緩和政策を導入・堅持しています。

さらに、2011年3月に発生した東日本大震災による金融市場の動揺を抑えるため、日銀は震災直後の14日、過去最高規模の15兆円の資金を即日供給しました。市場の資金量を示す日銀当座預金残高が過去最高の42兆円台に上っている状況下では、短期金利のマーケットはほとんど死んでいるといっていいでしょう。

金利商品の見直しなどホールセール向けビジネスの強化策は?

太田 従来からいろいろな努力をしています。例えば、2007年12月には日銀が公表する短期金利を取引対象とした「無担保コールオーバーナイト金利先物」を上場しました。現時点では、政策金利自体にまったく動きがなく、ヘッジニーズがフリーズしている市場環境なので取引がありません。

しかし、国債や借入金などを合わせた「国の借金」が900兆円を超えていることから、何らかの理由で、銀行などが大量に保有している国債の価格が変動し始めると、金利が大きく動くことが予想されます。「公的な取引所」である私たちは、将来に起こり得る金利上昇局面への備えを充実させておかなければなりません。

ユーロ円3カ月金利先物については、マーケットメーカーを入れるなど取引活発化策を現在検討中です。将来的にはもう少し中長期の金利商品の開発も検討課題です。

品ぞろえの充実という点では、かつて取引がないことから上場を廃止したロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の金利先物商品を“復活”する方針です。日本の銀行は東京銀行間取引金利(TIBOR)で貸出資産を持っていますが、外資系金融機関にはLIBORのほうが扱いやすい。以前の商品に改良を加え、2012年に再上場します。

金融市場における重要なインフラにデリバティブ清算機関があります。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)や金利スワップの清算業務への参入は?

太田 CDSは、言ってみれば、個別企業の債務不履行(デフォルト)を取引対象とする金融商品ですので、こうした個別銘柄の商品を扱わない東京金融取引所にはなじまないと思います。今のところCDSの清算(クリアリング)業務に参入することは考えていません。

一方、2つの金融機関の間で取引される金利スワップのクリアリング業務については、当取引所は金利先物の専門家であり、経験もあるので大変興味があります。

しかし、片方が外資系金融機関のケースにおいて、日本の清算機関を利用することが現実としてどの程度あるのか。世界のデファクトスタンダード(事実上の基準)は欧州系のLCH.Clearnetであり、連携をどんな形で進め得るかといった課題があります。クリアリング業務への参入には、手数料体系など、採算性の点でまだまだ検討の余地が多いというのが正直なところです。

世界的に取引所の再編が活発です。東京金融取引所としてのスタンスは?

太田 ニューヨーク証券取引所を運営するNYSEユーロネクストとドイツ取引所の合併合意のように、一連の統合・再編は、既存の証券取引所と私設取引所(PTS)およびダークプールとの競争に端を発した、すぐれて証券取引所間の動きだと思います。東京金融取引所は金融デリバティブ専門の取引所なので、最近の統合・再編の動きとは直接関係しません。

当取引所が他の取引所と合併することは考えていません。今後も「金利」「為替」「株価指数」を3本柱に、利便性の高いサービスを追加しながら全体の取引量を拡大し、金融デリバティブの総合取引所として市場活性化に貢献していきたいと考えています。

理想の取引所像は?

太田 東京金融取引所の使命は、個人投資家をはじめ機関投資家やヘッジファンドなど、あらゆる市場参加者に魅力的な商品を提供することだと考えます。投資家ニーズに沿った使い勝手の良い商品を提供できれば、1400兆円ともいわれる日本の個人金融資産を背景に、貯蓄から投資の流れが出てきて、東京市場の活性化に役立つと確信しています。

東京外国為替市場では、全体の取引高の約3割をFX投資家が占めるほどになっています。私たちが毎日公表している「くりっく365」の建玉動向は、世界の為替ディーラーも注目しているそうです。「日本のミセス・ワタナベの建玉はどうなっている? 買い残はいくらだ?」といった具合です。

「くりっく365」は、東京金融取引所が、個人投資家向けに構成した画期的な商品だと思います。証拠金取引がこれだけ個人投資家に浸透している日本は、金融デリバティブの世界において、かなり先進的といえるのではないでしょうか。

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