ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのグループ会社で運用戦略を提供するルーミス・セイレスは、特にクレジット戦略に定評がある。マクロ戦略共同責任者のトム・ファーヘイ氏とクレジット・リサーチ責任者のクリス・グットキン氏に、クレジット市場の展望などを聞いた。(取材日:2020年11月27日)

トム・ファーヘイ,クリス・グットキン
ルーミス・セイレス
マクロ戦略共同責任者(写真左)
トム・ファーヘイ氏
クレジット・リサーチ責任者(写真右)
クリス・グットキン氏

経済成長率と企業利益は回復見込み

──クレジット市場の今後の見通しは。

ファーヘイ 世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が急増しており、政府の財政支出が減少していることから、今後数カ月間、各国の経済の成長ペースは緩やかになる見込みだ。しかし、2021年初頭にはワクチンの普及が予想されており、米国の財政パッケージも予定され、市場は短期的な混乱を乗り切ることができると見ている。

クレジット・スプレッドは、2020年3月のセルオフで大きく拡大したのち縮小を続けているが、今後6カ月間はさらに縮小する余地がある。企業収益が回復し、金融政策が引き続き緩和されているため、十分下支えされている。市場はワクチン普及の成功と2021年半ばまでの社会的距離の維持の解消を期待していることが分かる。

ワクチンの配布が大幅に遅れれば、市場にとって大きな逆風となる。ルーミスは、2021年半ばまでに社会的距離の維持が終わると予想するが、もしこの解消が同年半を大幅に超えれば、市場は大きく失望してしまう可能性がある。もう一つのリスクは、企業収益の改善についてだ。ルーミスは、企業収益の力強い反発と企業のバランスシートにおける債務比率の低下を期待している。その結果、クレジット・スプレッド縮小による投資パフォーマンス向上を予測。企業業績が回復せず、レバレッジを大きくかけ続けることになれば、経済の回復にも大きな影響を与えるだろう。

──魅力的な投資機会はどこにあるか。

ファーヘイ クレジット・スプレッドは歴史的に見て大きく拡大したため、機関投資家はクレジットリスクの許容幅を広げ、より多くのデフォルト・リスクを引き受けることが可能となった。2021年には経済成長率と企業利益の大幅な回復が予想されており、デフォルト・リスク・プレミアムは引き続き低下すると考えられる。さらに、主要国の中央銀行は超緩和的な政策を行っている点を考慮すると、エマージング市場の社債やハイイールドのソブリン債には魅力的な投資機会があると言える。また、投資適格社債の信用リスクを取ることも可能だ。2021年後半に向け、さらなるドル安が期待されており、現地通貨建てエマージング市場の債券に利益をもたらすだろう。

クレジット投資を検討している場合、市場の不確実性やボラティリティが高い時期においては、アクティブ運用が非常に有用だ。格下げリスクやデフォルト・リスクが高い昨今の局面では、銘柄選択の見極めが重要だが、そのためにはクレジットに関する深い専門知識を持ち、マクロリサーチやクレジット分析に多大な社内リソースを割くことができるクレジット投資家とパートナーを組めるかが重要と言えるだろう。

パンデミックの深刻化をうまく抑制している日本は、伝統的な輸出主導の成長が景気後退からの脱却を促している。また、民間企業の債務削減についても改善の兆しが見えており、2021年には米国企業も同様の展開が進展していくことを期待している。

BBB格債券格下げ規模は予測どおり

──米国社債市場における「フォーリン・エンジェル」の大量発生について。

グットキン ルーミス・セイレスでは、2年ほど前からBBB格債券の規模と拡大、ハイイールドへの格下げリスクに注目し、「フォーリン・エンジェル」リスクの予測を開始した。新型コロナの加速に世界経済が急激に縮小した際、当社のフォーリン・エンジェルの規模予測を積極的に引き上げて以来、格下げの規模は我々の予想とほぼ一致している。

フォーリン・エンジェルの市場への影響は、投資適格債しか保有できない投資家の強制的な大規模な売りをハイイールド債市場が吸収しきれない可能性がある。事前に市場が特定の発行体のハイイールドへの格下げを予想している場合や、発行体の規模が小さい銘柄であればそれほど大きな影響を与えないと考えられる。

── 定評ある御社のクレジット・リサーチ能力のポイントは。

グットキン 第一に、ファンダメンタルズ分析に大きく焦点を当てている。該当する産業における構造、経済や政策といったマクロ環境下での競争環境の激しさの理解が重要だ。当社のアナリストは企業の戦略と競争力を分析し、経営陣の戦略の健全性と実行力を評価することで、キャッシュフローを生み出す能力に焦点を当てることができる。分析には、ESG(環境・社会・企業統治)などの重要なリスク要因を取り入れ、会社の資本配分方針(株式負債比率)とその安定性を検討することも含む。また、主要なリスク要因を特定し、独自の信用評価「ルーミス格付け」を提供することが可能だ。

第二の要素は、クレジットの相対価値評価だ。クレジットをリスクフリーレートと比較し、クレジットリスクレベルに沿って比較することで、フェア・バリューと比べて当該債券がどの程度割高・割安であるかを算定。想定するトータルリターンを示すことができる。

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