ウェルスマネジメント業界への提言 【第1回】ウェルスマネジメントの新潮流。個別化とテクノロジーがもたらす進化マーティン・グレウェルディンガー氏(Avaloq CEO)
日本では近年、富裕層・準富裕層の増加や資産形成ニーズの高度化を背景として、ウェルスマネジメントへの関心が着実に高まりつつある。今後、日本においてウェルスマネジメントを本格的に育成していくためには、先行して成熟してきた欧米の取り組みから示唆を得ることが大きな意義を持つと考えられる。
本連載は、日本におけるウェルスマネジメントに対する理解や普及を目的として、グローバルな視点からその本質や最新動向を考察するものである。初回では、スイスを拠点に世界の金融機関を支援するAvaloq社CEOへのインタビューを通じ、グローバル市場における潮流や金融機関に求められる役割の変化について紹介する。本連載が、今後の戦略検討や実務の一助となることを期待している。
監修:国際社会経済研究所(IISE)

マーティン・グレウェルディンガー氏
ボストン・コンサルティング・グループ、クレディ・スイス、コメルツ銀行などで20年以上にわたり国際的な金融キャリアを積んだのち、2019年に最高製品責任者(CPO)としてAvaloqに参画した。2021年4月には共同CEOとなり、経営運営を務め、2024年4月からはグループCEOとして同社を率いている。IEビジネススクールでMBA、フランクフルト金融経営大学でコンピューターサイエンスの学士号を取得している
AI活用とデータ基盤整備が業界・競争の構造を変える
現在、ウェルスマネジメント業界を形作っているグローバルトレンドをどのように見ているか。
現在のウェルスマネジメント業界を形作っている最大の共通要因は、厳しいマクロ経済環境である。不透明な経済見通しが長期化し、インフレ抑制を目的とした金融引き締め局面を経て、各国中央銀行は今後の金融政策の方向性を慎重に見極めている。地政学的リスクも重なり、投資家の行動はより慎重になっている。
こうした状況下では、短期的な市場変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点での資産形成を支援することが、アドバイザーにとってこれまで以上に重要になっている。
富の構造そのものの変化も、注目すべきトレンドだ。今後10年で、世界規模で大規模な世代間の資産移転が起こると見られている。この世代交代により、次世代の投資家が金融サービスに求める価値は大きく変化する。
次世代の投資家の特徴は、大きく二つある。一つ目は、投資におけるパーソナライズへの強い期待だ。従来のリスク・リターンを軸としたポートフォリオに加えて、自身の価値観や人生目標に合致した要素が反映されることを望んでいる。例えば、ESG(環境・社会・ガバナンス)や企業の社会的価値、行動姿勢といった観点が、投資判断の重要な要素となりつつある。
こうした価値観の変化に伴い、ポートフォリオに組み込まれるアセットも多様化している。投資信託や株式、ETF(上場投資信託)にとどまらず、プライベートエクイティやプライベートクレジット、デジタルアセット、エバーグリーン型商品など、投資対象の範囲は大きく広がりつつある。
二つ目は、リアルタイムでのインサイトに対する高い期待である。デジタルに精通した世代は、保有するポートフォリオに影響を与えるニュースや市場イベントが発生した際に、即座に情報を受け取り、その意味や影響についてアドバイスを得たいと考えている。こうした即時性と分かりやすさを実現するためには、テクノロジーやAI(人工知能)を活用したデジタル基盤が不可欠となる。
特にZ世代やα世代と呼ばれる、デジタル環境で育った若い世代(概ね12~30歳)にとって、パーソナライズとリアルタイム性は当然の前提条件であり、これらを満たすことが次世代のウェルスマネジメントにおける重要な要件となっている。
テクノロジー、特にAIは金融サービスやウェルスマネジメントの未来をどのように変えていくと考えるか。
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