各地の企業年金を訪問して、年金資産運用の現状や考え方などをうかがう「知りたい!隣の企業年金」。朝日新聞企業年金基金の常務理事を務めた阿部圭介氏がインタビューする企画の第6回は、住友理工企業年金基金の蔭山治伸(かげやま・はるのぶ)常務理事兼運用執行理事を訪ねました。

住友理工企業年金基金蔭山治伸さん

JR名古屋駅から中央線で6つ目の勝川(かちがわ)で降り、タクシーで約20分。平坦だった愛知県小牧市の交差点の角に、あたりを見渡すように住友理工の小牧本社が威容を見せる。2014年に「東海ゴム工業」から現社名に変わった同社は、防振ゴムなど自動車や電車向けの基幹部品のトップメーカーだ。

敷地内のテクニカルセンターで、数々の製品群を紹介してくれたのは住友理工企業年金基金・常務理事兼運用執行理事の蔭山治伸氏。

基金勤めは満14年。年金資産の運用を事実上担当するようになって10年が経った。

運用会社などによる四半期報告での鋭い質問ぶりに、各担当者の間では「小牧方面に出向くのは勇気がいる」と伝わる。

住友理工企業年金基金の概要

  • 所在地/愛知県小牧市
  • 設立/1968年10月(2004年1月に代行返上)
  • 加入者数/4061名
  • 受給者数/1143名
  • 資産総額/312億円
  • 予定利率/2.5%
  • 期待運用収益率/2.5%
  • 実績収益率/2.76%

(いずれも2022年3月末)

自前の評価基準で運用成績チェック

私自身も常務理事だったときは、運用会社や信託銀行の四半期報告で分からない点や不審な内容について徹底的に質問してきたつもりでした。ただ、蔭山さんは事前準備がすごい。

蔭山 これは珍しいかもしれませんが、私の場合は運用会社や信託銀行からの報告の前に、契約しているコンサルタントから当基金のポートフォリオ全体の四半期分析を聞くことにしています。こうすることで、採用しているファンドや運用会社などの成績や現状を客観的に把握できるからです。

また、運用各社には四半期報告の1~2週間前に資料を提出してもらっています。資料を読み込み、コンサル分析も踏まえて質問内容を事前に用意します。

そこに、よその基金と同じつもりで現れたりすると、担当者は大変な目に会いそうですね。

蔭山 各社さんも相当な準備をしてお見えになります。それでも時には、私の質問に対して「そのポイントを突いてこられましたか……」と言われることがあります。

さらに感心したのは、ファンドを評価する際の「評価基準」を設けていること。しかも自作で。

蔭山 図表1が実例です。当基金の資産運用委員会でかつて要望があり、「年金資産運用に関する基本方針」の中に「運用受託機関の運用評価にかかる規程」を策定しました。ここでは架空の「ABC信託銀行」とし、数字も加工していますが、イメージをつかんでもらえると思います。

こうすることで各ファンドの貢献度が見える化できます。また、評価基準に抵触する数値レベルなどを明示していますので、パフォーマンスがふるわず解約や減額に至る場合も、透明性や納得性が担保できると考えています。

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