日銀政策修正期待の後退は行き過ぎか

2022年12月に日本銀行がYCC(長短金利操作)の変動幅拡大を決めた際に金融市場は、「2023年4月以降、新総裁の下で金融政策の修正が一気に進む」との見方を強めた。

実際には、植田総裁の下過去2回の決定会合で、日本銀行は政策変更を見送り、異例の金融緩和を継続する姿勢を強調したことで金融市場の見方は修正され、それが円安・株高の進行を助けている。一時は2年債の利回りがプラスとなり、早期のマイナス金利政策解除の可能性が市場に織り込まれたが、現在では4年債まで利回りがマイナスとなった。植田総裁の5年の任期中にマイナス金利政策が解除されるかどうか分からない、との見方に修正された。

しかし、実際にはこうした金融市場の見方の修正は行き過ぎているのではないか。植田総裁は、異例の金融緩和の副作用を多く指摘しており、5年の任期中には政策修正は相当進むだろうと思う。

「日銀文学」に注意

植田総裁は、「分かりやすい情報発信に努める」としているが、日本銀行が使う用語は従来から分かりにくいとされ、それは「日銀文学」とも呼ばれてきた。

植田総裁は「金融緩和の継続が適当」と繰り返し強調しているが、これが市場の誤解を生んでいる面があるのではないか。

ここでいう「金融緩和の継続」とは、政策金利を上げないといった意味ではなく、金融緩和の状態を続けるとの意味だろう。例えば、現在マイナス0.1%の短期金利を0%にまで引き上げても、低金利は維持され金融緩和の状態は続く。2%の物価目標を達成できず、金融引き締めを行わずに金融緩和を継続する場合でも政策の見直しは行うだろう。

2%の物価目標を達成した場合の金融政策を、植田総裁は「金融引き締め」「出口戦略」「正常化」と呼び、達成できないと判断した場合の政策対応を「金融緩和の枠組み修正」と呼んで明確に区別しているように思われる。

【図表1】2つの金融政策の日銀的表現(日銀文学)
2つの金融政策の日銀的表現(日銀文学)
出所:野村総合研究所

物価目標を巡り岐路に立つ日本銀行

2%の物価目標を巡り、日本銀行は岐路に立っている。先行きには2つの道がある。来年も賃金上昇率がさらに高まり、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇となり2%の物価目標の達成が見通せるようになる、というのが「第1の道」だ(図表2)。この場合、日本銀行は金融政策を明確に転換し、植田総裁が表現する「金融引き締め」「出口戦略」「正常化」に向かうことになる。

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