- [要約]
- 大和総研では、全国の100金融法人(銀行、生損保、協同組織金融機関)及び73の年金基金(厚生年金、企業年金)を対象にオルタナティブ投資状況のアンケート調査を実施した。
- 本アンケートは2005年度の開始以来15回目となる。調査の実施期間は2019年12月6日から2020年1月14日で、全国の年金基金・金融法人を対象として、原則、郵送形式で実施した。金融法人については、いくつかの項目で市場金融部門及び総合企画部門から別々に回答を得ることで、投資家・発行体のスタンスの違いを区分けしている。
- アンケートは全部で52項目にわたり、以下の分類で集計を行った。
①オルタナティブ投資全体・今後の年金運用・有価証券運用の方向性
②デジタル銀行(チャレンジャーバンク及びデジタル通貨)
③SDGs(気候関連財務情報開示への対応、ESG投資を含む)
④オルタナティブ投資・属性について
インフラ投資(再生可能エネルギー含む)、ヘッジファンド投資、不動産投資、プライベートエクイティ投資、クレジット・ストラクチャード投資(証券化商品等)
⑤MiFIDⅡの影響
⑥金融規制(バーゼル)、バンク・ファイナンス(コンティンジェント・キャピタル、カバード・ボンド)
※本記事は大和総研が2020年2月28日に公表したレポートを抄録したものです。
1. はじめに
アンケートの送付は日本全国の年金基金及び金融機関を対象に行った。信用金庫、信用組合等の協同組織金融機関については、一定以上の預金量(信金1,500億円、信組1,000億円程度)を持つ機関を対象に送付した。詳細については図表1-1を参照されたい。
図表1-1 アンケート対象、回答数
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図表1-2 アンケート回答先資産規模(回答先のみ)
なお、アンケート結果は金融法人、年金基金別に数値をまとめ、参考のため前年度(2018年度)の結果を比較したものも適宜掲載した1。文章構成上、設問の順番が前後する点については了承願いたい。
1 数値は小数点以下第2位で四捨五入しているため、前年度比の±0.1誤差は了承願いたい。
2. オルタナティブ投資全体
2-1. オルタナティブ投資の実施状況(全体概況)
図表2-1はオルタナティブ投資の実施状況を示している。オルタナティブ投資を「実施している」とした割合は、金融法人では96.1%、前年度比でプラス(+)11.7パーセントポイント(以下ポイント)、年金基金では87.7%、同プラス(+)3.4ポイントとなった。
オルタナティブ投資の選択状況(図表2-2)を見ると、各資産により採用比率の上下が金融法人と年金基金とでは対照的である。金融法人では「ヘッジファンド」の採用比率が上昇に転じた一方、年金基金では低下している(金融法人28.4%:前年度比+2.1ポイント、年金基金75.0%:同マイナス(▲)5.5ポイント)。2019年も前年に続きパフォーマンスの低迷などを理由に、ヘッジファンドは投資を敬遠されるなど、苦しい環境にあった。また「インフラファンド」は金融法人で採用比率を下げたが、年金法人では大きく上昇している(金融法人6.8%:同▲2.5ポイント、年金基金35.9%:同+11.5ポイント)。
「メザニン投資(優先株、劣後ローン、劣後債、ハイブリッド等)」は金融法人で採用比率を大きく上げた(32.4%:前年度比+16.6ポイント、年金基金9.4%:同+2.1ポイント)。「アジア・エマージング株式・債券」は年金基金で大きく採用比率を下げている(金融法人10.8%:同▲1.0ポイント、年金基金9.4%:同▲12.6ポイント)。さらに、金融法人での国内ETF(70.3%)や仕組債(70.3%)の採用比率の高さは、年金基金での採用なしの状況と好対照となった。逆に保険リンク戦略は年金基金では6割近い採用比率を見せる一方で、金融法人では1割にも満たない状態である(金融法人2.7%、年金基金57.8%)。