TOPインタビュー 日本取引所グループ 清田 瞭氏 JPX日経400などの指数ビジネスやアジアの取引所との関係深化に注力
ROE重視経営の効果はこれから
ROE(株主資本利益率)を評価軸にした「JPX日経インデックス400(以下、JPX日経400 )」は、株主重視の流れを生み出す一つの原動力になった。今後、どのようなタイプの上場商品の開発に取り組んでいくのか。
清田 日本経済新聞社と共同開発したJPX日経400に入りたい、入ってよかったという企業の声を多く聞くが、構成銘柄に選ばれるにはROEを高めなければならない。そのためには株主に向いた経営、資本の効率を意識した経営ということで、不要不急の資産を持たないバランスシートマネジメントが重要になる。
JPX日経400ではROEが何かとクローズアップされているが、実は営業利益や時価総額といった定量的な評価のほかに、コーポレートガバナンスの面から独立した社外取締役の複数採用や英文による決算情報の開示などの定性的な評価を経て構成銘柄を選定している。
例えばJPX日経400はインデックスファンドや先物といった展開以外に、2016年中にオプションの開始を予定するなど、指数はビジネス的にもポテンシャルが大きい。これまで多くの指数を開発してきた米S&Pダウ・ジョーンズと手を組むなど、取引手数料以外の収益源として指数ビジネスの強化も進めている。
JPX日経400の登場で企業トップがROEを意識するようになった。
清田 コーポレートガバナンス・コードの導入もあり、企業経営者の視点が大きく変わったと思う。海外の機関投資家からも同じような意見を聞く。
しかし、ROEが5%台から8%台に上がったのは、コーポレートガバナンス・コードの影響でも、企業経営者が
ROE重視の経営をしたからでもない。アベノミクスによる円安でインバウンド消費などが活発化したからで、ROE重視の経営が効果をあらわすのはこれからだ。
現在、日本企業のROEが欧米の上場企業並みの12~13%まで上がれば、理屈のうえでは2万円の株価が3万円近くになる。企業経営者のマインドセットの転換は、日本の株式市場を激変させるほどのインパクトがある。
東芝を特設注意市場銘柄に、ガバナンス改善を求める
コーポレートガバナンス・コードの導入でアマダやファナックのように株主の方を向く企業が増えた一方で、コーポレートガバナンスの先進的企業と見られていた東芝が会計不祥事を引き起こした。
清田 コーポレートガバナンス・コードに基づいて取締役の過半数を社外取締役にするなど形は整えていたが、“魂”は入っていなかったのだろう。そのため、ガバナンスの要となる社外取締役に正しい情報が届いていかなかったのではないか。
東芝がコーポレートガバナンスをつくったときに、もしも2015年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コードの73の原則を一つひとつ検討していたら、このようなことは起こらなかったと思う。
長年にわたって不適切な会計処理を放置してきたトップの責任は非常に大きい。そして社内で発見できず、内部告発をきっかけに明るみになった。しかも、外部の第三者委員会の調査も十分とはいえなかった。
企業規模が大きすぎるため、対応が後手後手になったのかもしれない。しかし、室町新体制が始まり、社外取締役には経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)などが就任したので、生まれ変わる可能性は十分あると思う。
今後の変化に期待して、2015年9月15日に「特設注意市場銘柄」に指定し、東芝のガバナンスの改善を求める
1年間の猶予期間を設けた。期限までに東芝と十分なコミュニケーションをとって、変化の後押しをしていきたい。