上場時期の集中回避などIPO問題の改善に取り組む

2014年12月に新規上場したゲーム会社「gumi」をはじめ、上場後に業績を下方修正する企業が相次いだ。

清田 2015年3月31日に、JPXと日本証券業協会、日本公認会計士協会の3者共同で「①新規公開会社の経営者による不適切な取引」、「②上場直後の業績予想の大幅な修正」、「③上場時期の集中」への対応に取り組むことを発表した(図表2)。

例えば、日本では企業の決算時期の関係で、上場時期は3月と12月に集中しやすい。その結果、審査や監査が不十分になったのではという指摘もあるため、IPO(新規株式公開)の集中状況を事前に証券会社に通知することで、上場時期の集中回避を図っている。

2014年は年間80社のうち28社が12月の上場になったが、2015年は98社のうち17社が12月と、一応効果はあらわれている。IPO問題の根本的な部分は改善してきていると思う。

日本郵政やゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の日本郵政グループ3社が2015年11月4日に上場した。1987年のNT T以来の大型上場といわれる郵政3社に対する期待、要望は。

清田 日本郵政の売り出しに伴う売却益は復興財源に充てるため、政府としては成功させなければいけない案件である。その一方で市場の番人である我々としては持ち株会社と、子会社が同時に上場する親子上場が気になった。取引上は望ましい姿ではないからだ。

ただし、親子上場が問題になるのは、親会社が支配的でありながら、子会社を上場させるケース。親会社の日本郵政には、子会社の少数株主の利害を侵害しない仕組みをつくってほしいと強く要請している。

もう1つは子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の金融2社は、国営企業としての規制を大きく受けながらの上場となるため、どのような成長戦略を描けるのか非常に気にしている。日本郵便が抱える郵便局ネットワークの活用といった将来像を出してもらったうえで上場の認可を出した。

現時点では国内、海外ともに投資家の評価は高い。とくに個人投資家のなかには初めて投資をする方も多く、「貯蓄から投資へ」の普及に弾みがつけばと期待している。

取引時間の延長に関する今後の展望は。

清田 取引時間の延長は、JPXの斉藤淳前CEOが長年主張し、私自身も必要性を感じているが、証券会社からの同意を得られず今回は見送ることにした。しかし、リーマン・ショックやギリシャ債務問題など日本株にも影響をおよぼす出来事は、日本市場が閉まっている時間帯に起こるケースが多い。そんなときに日本株の投資家には取引機会がないことになる。

市場参加者からのニーズの高い取引時間の延長を実現できなかったことは、市場運営者として責任を果たせなかったことになる。関係者のコンセンサスが一致するまでは当面動けないが、機が熟せば取引時間の延長を試みたい。