東京証券取引所(以下、東証)と大阪証券取引所(以下、大証)の経営統合により、JPX(日本取引所グループ)が誕生しておよそ3年。香港やシンガポール、上海などの取引所との競争が激化するなか、「アジアNO.1」を目指すJPXはどのような手を打とうとしているのか。2015年6月よりJPXの新たな舵取り役を務める清田瞭氏に話を聞いた。(工藤晋也)

85億円の費用削減を達成、システム投資は今後も継続

清田氏東証と大証が1つになったことでどのような効果が得られたか。

清田 2013年1月の東証と大証の統合後、7月に現物市場、翌2014年3月にデリバティブ市場をそれぞれ一本化した結果、2012年度比75億円のコスト削減を実現した。さらに人事や総務などの組織再編で、同年度比10億円ほどのコストを圧縮し、同年度比85億円の費用削減目標を達成できた。

投資家や証券会社にも統合のメリットがあったと考える。投資家には、デリバティブ取引における証拠金の一元化で、取引コストの低下や利便性の向上、証券会社にはシステム投資の負担軽減などの利点があった。

ただし、取引所は装置産業の面もあり、システムにかかるコストをいたずらに削ってしまっては、国際競争に遅れをとってしまう。引き続きシステム投資には力を入れていきたい。

東京商品取引所(TOCOM)との統合による総合取引所構想が出ているが、進ちょく状況は。

清田 金融デリバティブとコモディティ・デリバティブを一つにする総合取引所構想については、2014年6月に閣議決定した日本再興戦略の改訂版でも「総合取引所を可及的速やかに実現する」と明記されている。だが、監督官庁が金融庁、経済産業省、農林水産省にまたがっており、各省庁間での調整が進んでいないのが実態だ。

また、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所グループ)などの世界の主要取引所は、金融デリバティブ、コモディティ・デリバティブともに充実している。対する日本は金融デリバティブ市場は着実に拡大しているものの、
TOCOMが取り扱うコモディティ・デリバティブ市場が伸び悩んでいるのが実情だ。

我々は株式会社なので株主の意向に反した行動はとれない。TOCOMが経営不振に陥ったときに総合取引所の構想が浮上しても、手を差し伸べることはできないだろう。TOCOMの経営体力があるうちに、win-winの関係で総合取引所を実現するのが理想だが、しばらくは難しいと思う。

ただし、コモディティ・デリバティブは重要な商品として見ているので、場合によってはデリバティブ商品先物の指数だけ上場するという選択肢も含めて、幅広く検討していきたい。