平時の「LED戦略」、有事の「CDB戦略」

高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

筆者はマイナス金利も含めた超低金利状況、「金利水没」での対応策として「LED戦略」を紹介してきた。LED戦略とは、金利水没下の運用戦略3次元で、LはLong(長期)、Eは External (海外)、DはDiversified(多様)である。

一方、コロナショックからリスク資産を回避する「質への逃避」が生じ、LEDの逆、緊急避難的「CDB戦略」も生じた。平時ではLED戦略でも、有事では、「L」の次元で「キャッシュ」現金回帰「C」(Cash)。「E」の次元で、自国回帰、脱グローバル化の「D」(Domestic)。「D」では、多様な商品への分散でなく、基本に戻る「B」(Basic)で、具体的には運用の基本・主食としての債券(おコメ)だ。

【図表】LED戦略とCDB戦略

LED戦略とCDB戦略
(作成)岡三証券

平時に戻ればLED戦略だが、従来とは異なるLED戦略も

中長期的視点に立ってポートフォリオを構築するには、基本となる「LED戦略」で長期的視野での分散が重要だ。ただし、マイナス金利政策によって投資の常識である「無リスク資産」が消失し、現状では待機資金として金利・インカムを生む運用手段がない。しかも、一定のコストを背負った資金だけに何らかの形でインカムを確保せざるを得ない。

結局、市場参加者は2・3月の緊急避難的CDB戦略から、嵐が収まりだしたなか少しでもインカムを享受すべく、4月以降、恐る恐るLEDの次元の運用に戻した。各国の積極的政策対応の結果、まずクレジット市場、次いで株式市場にも資金が戻り、LED戦略の「E」、「D」の次元に戻ったことが株式市場中心の戻りを支えた。

ただし、市場参加者の悩みは、このまま元のLED戦略を続けていいのかだ。LED戦略とは長年続いた、自由化、グローバル化、市場化、レバレッジ拡大の潮流の「利回り追求」(yield hunting、search for yield)を意味した。欧米中心に高い期待利回りを背負った資金なだけに「利回り追求」は不可避だが、マイナス金利下、様々な形でレバレッジを高めた対応での副作用もすでに生じていた。

予想以上に相場は戻る可能性があるが、「修正LED戦略」で無理をしない運用に

昨今の世界的運用スタンスは、緊急避難的CDB戦略から再びLED戦略に戻りだした状況だ。ただし、新型コロナウイルスの二次感染を含め、ショックで再び危機モードに戻る不安と背中合わせだ。実体経済でも、中小企業中心に倒産リスクが生じ、時間差を伴って景況感が下方屈折するリスクもある。危機に陥れば再びCDB戦略に戻る不安を抱えるだけに、LED戦略でインカムを享受しつつも、常に、利益を確定する慎重な対応をせざるを得ない。

今後、一定の制約付きのLED戦略、「修正LED戦略」にならざるを得ない。コロナショックで売り上げが2~3割低下することを勘案し、7~8割経済のなかでキャッシュフローの生成を念頭に置く必要もある。期待収益率の低下も生じうるだけに、投資家は投資に対する視線を下げる必要がある。

一方、金融緩和はコロナショック以前に比べ一段と強まるだけに、戻り局面では上昇圧力が加速し、金融緩和が続くとの安心感も一段の相場上昇要因になる。当初の予想以上の上昇が生じる可能性もあるが、一度、不安が再燃すれば急な売りに転ずるボラティリティの高まりが幾度となく繰り返されることを2020年の市場では覚悟する必要がある。

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