バブルの尺度は難しいが

高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

以下の図表は株式市場の時価総額とGDPの比をとったもので、バフェット指数とも称される。この指標は、実体経済に対する資産価格の比率であり、実体経済に対する資産価格の拡張の度合い、すなわちバブルの可能性を示したものだ。具体的には、米国のウィルシャー5000指数の時価総額を名目GDPで割ったものである。

昨年来、株式市場が史上最高値を更新するなかで、米国のバフェット指数は2020年の年初にかけて160の高値を付けた。その後、2月以降、コロナショックで急落したものの、6月にかけて再び160の高値に戻った。2020年の160超えの水準は歴史的に見ても2000年代初のITバブル時期を上回る水準だ。単純にNYダウやナスダックが史上最高値を更新したことに止まらず、過熱感を帯びた状況を示したものと考えられる。

【図表】バフェット指数推移

バフェット指数推移
(作成)岡三証券
日次、20年4~7月は市場予想ベースの名目GDPをもとに算出、直近は7月13日

コロナショックがバブル崩壊を救う

コロナショックは不可抗力、自然災害との共通認識が広がりやすい分、世論上、バブル崩壊時のような景気対策への反対が生じにくい。米国の状況が本来はバブルで調整が不可避であったとしても、コロナ対策の名の下にその状況を正当化させる力が働きやすい。コロナショックが米株の救世主になった面もあり、その結果、格差がますます拡大する可能性がある。

今年6月10日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、米国FRB(連邦準備理事会)は現状の事実上のゼロ金利政策を2022年末まで続けることを示唆し、FRBは金利引き上げの兆しがほとんど感じられない緩和姿勢にある。先に示したバフェット指数の高止まりは、こうした低金利環境のなかでのバリュエーションに沿ったものとも考えることができる。

そもそも、日本や欧州のマイナス金利も含めた超低金利策は、「勝ち組」を政府・企業にし、「負け組」を金融機関・家計とする格差をもたらす。その結果、「リバーサルレート論」を含め金融機能の低下や、資産運用業界の苦境に伴う副作用も生じていた。さらに、フランスの著名経済学者であるピケティが「21世紀の資本」で示してきた資本家への富と集積による格差を拡大させることの問題も生じていた。今日、米国では株式の80%以上を上位10%の富裕層が保有するとされる。今回のコロナショックは皮肉にもこうした格差問題を一層顕現化させる面がある。

超低金利が支える資産市場、トリガーはなにか

今日の資産価格は株式市場も不動産市場も超低金利の金融緩和が大きく支える構造にある。ただし、その副作用が、①リバーサルレートを中心にした金融機能に、②格差拡大に伴う社会的不安定さにつながりかねない面が生じていること、③財政政策での拡張が債務危機の不安を持つこと、④資産バブルだけでなく実際のインフレリスクをもたらすこと、などの副作用を内包する。ただし、以上のリスク要因が今日の社会を揺るがすレベルに達するまでは今の状態が続くと考えられる。

バブル崩壊の転換を掴むのは容易でない。先に示した米国バフェット指数で160を超えれば機械的に転換が生じるものでもない。それだけに、市場参加者は「音楽が止まるまで踊る」状況にある。ただし、以上の金融不均衡が従来以上に拡大しやすいだけに2020年代の環境はボラティリティの高さを覚悟した対応が必要だ。しかも、そのきっかけが金融政策の転換となる可能性が高いこと。また、そのトリガーは純粋経済的事象に止まらず、格差問題を中心とした社会政治的な側面にあることに注目する必要がある。2020年代を展望するには、以上で挙げられた変化の兆しを示す「炭鉱のカナリア」に注目だ。