「コロナ7業種」を直撃したが、残存する4段階リスク

高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

以下の図表は企業のバランスシートの概念図である。コロナショックでの特徴は、中小零細の「コロナ7業種」(陸運、飲食、宿泊、娯楽、小売、生活関連、医療福祉)とした「face to face」の産業を中心にバランスシートの右側、資本の毀損が問題の起点となっていることである。すなわち、コロナショックの特徴は、中小零細企業を中心に売上げ減少などによる損失から資本を失うことに伴った倒産や廃業も含めた問題にあり、比較的中小零細企業に限定されている。一方、「コロナ7業種」に限らず、大企業も含めた問題にまで派生するリスクとしては以下の4つがある。

4段階のリスク

① 資産デフレ
② グローバルな大企業への波及
③ 金融システム問題で大手銀行にも波及
④ 雇用不安から社会問題化

【図表】バランスシートからみた4段階のリスクシナリオ

バランスシートからみた4段階のリスクシナリオ
作成:岡三証券

第1段階が、先行き期待低下から株式・不動産を中心に資産価格が下落する、バランスシートの左側の資産価値毀損である。

第2段階は、世界的な需要の減少によってグローバルな大企業にまで波及する不安だ。そのリスクは第1段階のリスク要因である資産デフレによる減損リスクによっても加速される。なかでもM&Aを中心としたのれんの償却が広がるリスクも存在する。

第3段階は、中小企業の倒産不安に加えて、以上の第1段階の資産デフレ、第2段階の大企業の負担も加わって、グローバル企業に不安が波及することで大手銀行にまで負担が拡大し金融システム問題につながるリスクである。

第4段階は、以上の不安から中小企業を中心とした倒産リスクが雇用問題につながり社会不安が幅広く生じる点にある。

以上から、今回のコロナショックについては、「コロナ7業種」に限定した問題の広がりをいかに遮断するかが重要な課題となる。現段階では、「コロナ7業種」からの遮断ができていることが景況感の大きな悪化を防いでいる。特に、資産価格下落を食い止めている点が大きく、その結果、大手企業への波及を防いでいる。ただし、その反面、資産価格が堅調ななか、世界規模で格差拡大による潜在的問題を抱えるだけに留意も必要であろう。

資産価格下落を食い止めたことが波及を遮断

2008年のリーマン・ショックでは、金融の制約から大手グローバル企業への甚大な影響が生じた。リーマン・ショックの時には市場性ファイナンスに依存したファンドの資金繰りが顕現化しただけに、今回も日本のみならずグローバルな視野でファンドを中心としたシャドーバンクの資金繰りには十分な配慮が必要になる。コロナショックでは現時点ではそうした影響は限定されていると見られる。

日本のバブル崩壊、リーマン・ショックでは、金融の制約から資産価格が大幅に下落したことがグローバル企業に大きな影響を与えた。今回は、2020年3月以降、世界的規模での財政・金融政策に伴い資産市場を支えたことがその後の回復の大きな要因になったと考えられる。

3月・4月の世界的金融財政政策が波及を防いだ

仮に、今年3月にかけて米国を先頭にして行われた大規模な金融財政政策のサポートがなかった場合、資産価格の下落が続き、今日の状況とは大きく様相が異なった可能性もある。すなわち、金融面から波及したのがリーマンショックであり、資金繰りの観点からグローバル企業にも波及が生じ、その結果、金融システム問題が拡大された。金融の制約で大規模な資産価格毀損と大企業への波及、さらには、金融システムの不安へのネガティブ・フィードバックが生じたことになる。今回、コロナショックに対しては、以上のリスクを今年春先の各国の早期な政策対応で回避した点が大きかった。

今後も、以上のリスクの連鎖を回避するには、資産価値の維持を中心とする世界的な金融財政政策の協調も必要になる。「コロナ7業種」の激震は今も続いているが、各国の未曽有な経済対策で、資産デフレやグローバル企業への波及を遮断している状況だ。ただし、今後、米大統領選も含めた政策への不確実性もあるだけに、政策動向から目が離せない。また、資産価格上昇から生じる格差に伴い社会不安は残存することに留意も必要だ。今後も市場参加者は以上の波及経路を念頭に置きながら、政治・社会的状況も踏まえた上でリスク管理を行う必要があるだろう。