新型コロナの特効薬は株式市場にプラスかマイナスか?

高田 創
岡三証券
グローバル・リサーチ・センター
理事長
高田 創

下期になった。2020年4月の上期開始時と異なり、下期に入った10月は市場に安心感も漂っている。

上期、株式市場は予想外の上昇相場が続いたなか、よく話題になるのが「株式市場のリスクシナリオはなにか」という点だ。これまで、リスクシナリオとして新型コロナウイルスの感染拡大や、再発リスクが挙げられてきた。一方、今回の問題提起は逆に、コロナ感染が急速に終息に向かう場合、例えば特効薬やワクチンが開発されたとしたら、それは株式市場にプラスに働くのか、それともマイナスに働くのかだ。

筆者の認識は、以上の皆が待ち望むケースの場合、最初の反応はコロナショック終息・景気回復を好感して株価上昇だが、その後、金融緩和の縮小観測が生じ急落も起こりうるのではないかとの点だ。景気減速下の株価上昇でコロナバブルとされるなか、どこかではそのプレミアム剥落リスクを想定する必要もある。すなわち、株式市場の最大のリスクはコロナ特効薬になる可能性もある。

コロナショックがバブル崩壊を救う

日米の株式市場はどれも、2020年2月のコロナショックで大きな影響を受ける前の水準を取り戻している。しかし、実体経済はどの指標で見てもコロナショックでのマイナスの影響を取り戻していない。そんななか、株価がショック以前の水準まで値を戻したのは、金融緩和により運用圧力が高まったことに支えられていると考えられる。運用上では、2月、3月の緊急避難的スタイルから、恐る恐る、従来の戦略に戻ってリスクテイクのフロンティアを広げたことが市場の回復につながったと考えられる。

米国ではコロナショックが生じる前、今年2月に米株は史上最高値を更新し、すでに過熱感が生じていた。仮に、コロナショックがなくても暴落が生じた可能性もある。その場合、過熱のなかで当然の調整としてみなされ、株式市場をサポートする対応策の議論にもならなかっただろう。しかし、現実にはコロナショックが生じたことで、市場の混乱に対処し異例な金融緩和と財政支援が世界的な規模で行われた。コロナ感染が米国株式市場の救世主になったようなものだ。しかも、コロナショックは不可抗力、自然災害との共通認識が広がりやすい分、世論上もリーマン・ショック後のような景気対策への抵抗も生じなかった。米国では、本来、バブルで調整が不可避であったとしても、コロナ対策の名の下に株価支援を正当化させる力が働いたことになる。

コロナが支える「永遠のゼロ」、超低金利が支える資産市場

その後、今年9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、米国FRB(連邦準備理事会)は現状の事実上のゼロ金利政策を2023年末まで続けることを示唆し、FRBは金利引き上げの兆しも感じられない緩和姿勢にある。株価の高止まりはこうした低金利環境継続、「永遠のゼロ」期待に支えられている。

一方、仮に、コロナ感染の終息期待でこれまでの異例な政策対応の正常化議論が生じる場合には、資産市場を底支えする金融緩和に修正観測も生じうる。

先述の通り、FRBがゼロ金利政策を2023年末まで継続すると示唆している以上、実際に米国で政策金利が引き上げられるタイミングは2024年以降と、かなり先かもしれない。しかし、市場で金融政策の次の一手は緩和ではなく、正常化ではないかと意識されるだけでも、大きな期待転換につながる。金融政策に対する思惑の転換が市場参加者の大幅なポジション調整をもたらす可能性があり、そのトリガーとなりうるのが、コロナ感染への特効薬などへの思惑だ。

コロナショックの下のリスクシナリオは、感染拡大と感染終息のバーベルに

コロナショック下、2020年度上期を振り返れば、最大のリスク要因は感染の拡大や再拡大など、感染の深刻化に伴う経済波及リスクだった。一方、下期以降、引き続き冬場にかけた感染再発もあるが、同時に、感染終息に向けたリスクも頭の片隅に置く必要もある。すなわち、以下の図表のように、リスクは、感染悪化が深刻化するケースと、終息に向かうケースの両極端のバーベルのような状況だ。現在の状況は、そのどちらにもなっていないなか、金融緩和に支えられた居心地の良い、「ゴルディロックス状況」だ。

【図表】今後のリスクは悪化・終息のバーベル状況

今後のリスクは悪化・終息のバーベル状況
作成:岡三証券

下期以降、2021年に向けたシナリオでは、ゴルディロックス状況がいずれどちらかの方向に進む「思惑」、期待の転換に留意が必要だ。市場参加者としては、その双方のリスクシナリオに目配りする必要があるだろう。ただし、あまりに正反対のリスクには対応が難しいだけに、ややリスクを落としめにして期待水準も引き下げ、一定のキャッシュポジションを続けながらの対応が現実的だろう。

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