米国教職員退職年金/保険組合(TIAA)の資産運用部門であり、1.1兆ドル(約160兆円)の運用資産を有する世界有数の運用会社Nuveen(ヌビーン)は2023年に125周年を迎えた。同社は2023年11月9日、都内でマクロ経済と各資産クラスの見通しおよび投資方針について策定するグローバル投資委員会を開催した。同日実施した記者会見におけるヌビーン・ジャパン シニア・マネージング・ディレクター 代表取締役社長の鈴木康之氏の講演内容をお伝えする。

Nuveenグループの日本におけるビジネスの柱は、「営業拠点として機関投資家向け商品の提供」と「運用拠点として日本株式および日本不動産等の運用」の大きく2つある。

一般的に、外資系運用会社は日本の機関投資家から資金を集めて主に米欧の資産に投資・運用するが、同グループでは日本のマーケットの成長にも貢献すべきとの考えから、グループの親会社や海外の機関投資家から集めた資金を日本のマーケットにも振り向ける。

同グループが運用する日本市場の運用資産残高は現在約3兆円。日本の株式、債券、不動産に分散して投資を行っている。

記者会見でのヌビーン・ジャパン シニア・マネージング・ディレクター 代表取締役社長の鈴木康之氏

日本法人のヌビーン・ジャパンに目を向けると、ここ数年の運用資産残高は特に債券の伸びが顕著で、その多くはNuveenグループが得意とするアセットの一つである米国地方債が占める。米国地方債は、信用力のクオリティの高さからインカムによる安定運用志向の日本の機関投資家からの引き合いが強い。

近年はオルタナティブの運用資産残高が大きく伸びており、足元では約5000億円に上る。「最近の傾向としては富裕層の個人投資家からの資金流入が増えている。過去3年で300億円ほど積み上がっており、今後もこのトレンドは加速していくと考える」(鈴木氏)。

Nuveenは2018年、ヌビーン・ジャパンを設立。ちょうど金融庁が、「東京都が魅力あるビジネスの場として認知され、世界中から人材・情報・資金の集まる拠点となるための取り組みを推進する」との観点から海外金融事業者の日本拠点開設の誘致を推進し始めた頃だ。Nuveen以外にも日本法人を立ち上げた外資系運用会社は複数あったが、現在は撤退しているところも見受けられる。

鈴木氏は、ヌビーン・ジャパンが日本で成功を収めている理由として、「日本の市場慣行・商慣行を尊重している点が大きい」と考えを述べた。

例えば、他の外資系運用会社では、本社の意向を踏まえ、アドミニストレーションは外資系の提携先企業を選定する傾向にあるが、それとは異なり、ヌビーン・ジャパンでは日本のアカウントの大部分は日本の大手信託銀行と協働している。また、商品提供においても、「ラインナップが豊富な分、日本中の投資家をカバーすることが難しいことから、信託銀行や証券会社など国内系の金融機関と連携している」(鈴木氏)。

日本法人の設立から5年以上経過する中で、社員の定着率が非常に高い点も機関投資家からは好印象だろう。

ヌビーン・ジャパンは、個人投資家向けには一貫して長期の資産形成に資する資産としてマルチアセット商品を提供してきた。実際、機関投資家からはマルチアセット商品のニーズが最も高く、金融庁からも評価されているという。政府の掲げる「資産運用立国」の実現に向けて、「ヌビーン・ジャパンは商品提供というかたちで期待に応えていく」と鈴木氏は語った。