年金運用お悩み相談室 第15回 Q.近年の運用で十分な積立余剰を確保できました。 今後はどのように取り組むのがよいですか?(ほか1質問)
読者アンケートに寄せられたり、編集部が取材で耳にしたりした年金運用のお悩みについて、年金運用コンサルタントとして活躍するニッセイ基礎研究所の徳島勝幸氏に尋ねます。
Q.近年の運用で十分な積立余剰を確保できました。今後はどのように取り組むのがよいですか?
積立余剰は制度の見直しの契機
近年の株高と円安によって、多くの企業年金が積立余剰の状態になっていると考えられます。企業年金の場合には、余剰を積極的にリスクテイクに活用し、損失発生時のバッファーとするという考え方と、全体的にリスクを抑えて安定的な運用を強く意識するといった2つの考え方があります。
企業の経営と異なり、年金運用の目的は想定運用利回りの確保であり、必ずしも高いリスクを負ってより高いリターンを求めるものではありません。公的年金を見ても、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用では、欧米型の運用に見られる「より高いリスクをとってより高い利回りを求める」という発想はありません。必要な利回りを最低限のリスクで獲得することが目標とされています。
負債を含めた年金制度で考えると、十分な積立余剰が存在する場合には、コントリビューション・ホリデイと呼ばれる母体企業による掛金拠出の停止または抑制という取り組みがあります。しかし恒常的に余剰を確保できていない場合には、拠出の抑制を図ることは適切とは言えません。
これまでに高い運用利回りを得られたとしても、その裏側で物価が上昇しているならば、年金給付水準と目標運用利回りを見直すことが必要になる可能性があります。想定運用利回りの水準は、ゼロ金利時代と、十分に国債利回りが上昇した現在とでは、異ならざるを得ません。10年国債利回りが3% 近い水準となっているときに、年金によって提供される利回りが2%程度であれば、「何のために運用しているのか」という疑問が加入者に生じます。
中長期では、想定運用利回りを含めた制度の見直しを検討する必要が生じるでしょう。個々の企業年金がどう対応するかは、労使関係や母体企業の経営状態によっても異なります。積立余剰に関しては、負債側を含めた年金制度全般で考えることが求められます。
近年の制度として活用を検討したいのは、リスク対応掛金です。リスク対応掛金は、不況期などの「将来発生するリスク」に掛金が増加することを抑制するため、あらかじめ「将来発生するリスク」を測定し、その水準を踏まえて上乗せの掛金拠出を行うことのできる仕組みです。
積立余剰と年金運用
もし財政再計算を経て、想定運用利回りなど制度面での見直しが必要ないのであれば、リスクの抑制に取り組むことが現実的な選択肢です。日本の企業年金は株式への配分が抑制的ですが、株式や外貨建て資産といったリスクの高い資産に過大に配分していないか、また、不必要にオルタナティブ資産への配分が高まっていないか検討するのがよいでしょう。大きな価格変動リスクを排除した国内債券への投資を基盤とし、負債とのマッチングを意識したALM(資産・負債の総合管理)を考える好機ではないでしょうか。
国内債券への投資は、金利上昇過程でマイナスのリターンとなるため、国内債券への投資だけにすることは困難ですが、金利上昇が落ち着けば、以降の運用利回りを安定的に獲得することが期待できます。したがって、想定運用利回りと比べて十分な金利水準にあるかどうかが、1つの判断基準になります。
ALMによるマッチングを意識するならば、ポリシー・ベンチマークをNOMURA-BPI総合とすることは不適切とされる可能性があります。個々の企業年金がどのような年限の債券を保有するのが適切かは、年金の負債構成によって異なるはずです。市場インデックスで代替するのは簡便法でしかありません。今後、国の財政規律の弛緩が容認されるならば、長期の金利水準を大きく押し上げる要因になりかねません。国内債券投資における年限構成を検討する余地があります。
年金ALMにおいても、超長期の年限に対しては、債券のみで完全なマッチングができないため、ある程度の株式などの組み入れは必要です。積立余剰は、資産配分を見直す好機であるとも言えます。過大なリスクを避け、どの程度の株式や外国有価証券、オルタナティブ投資を保有するのが適切か、検討してみてはいかがでしょうか。
Q.オルタナティブ投資の投資上限について、どのように考えたらよいでしょうか?
オルタナティブの概念整理
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