富士通と米運用会社ニューバーガー・バーマンで通算30年。一貫して年金運用の現場に立ち続けた田中敬久さんの聞き書き。今回は、2000年代初めに日本の企業年金を揺るがせた「代行返上」という大波にフォーカスを当てます。「国から年金資産を企業が預かり、代わりに運用する」という今から振り返ると面妖な仕組みをすったもんだの挙げ句に解消。しかし、その後に企業年金の抜本改革という大仕事が待ち構えていました。

「代行返上」で社長賞 富士通厚生年金基金は2005年9月に国から代行返上の認可を受け、企業年金基金に移行した。「代行返上の膨大かつ困難な作業を乗り切った」として、基金や人事・経理部門のメンバーが社長賞を受けた。正面中央(白ワイシャツ姿)が当時の黒川博昭社長。その左隣が田中敬久さん
「代行返上」で社長賞 富士通厚生年金基金は2005年9月に国から代行返上の認可を受け、企業年金基金に移行した。「代行返上の膨大かつ困難な作業を乗り切った」として、基金や人事・経理部門のメンバーが社長賞を受けた。正面中央(白ワイシャツ姿)が当時の黒川博昭社長。その左隣が田中敬久さん
【代行返上とは】

厚生年金基金は、国の厚生年金の報酬比例部分を国に代わって企業側が支給する「代行部分」と、独自に上乗せして給付する「プラスアルファ部分」を合わせて運営・給付していた。運用環境が良い時代には予定利率を上回る運用実績があり、その差分が企業側の「収入」となった。しかし1990年代後半からの低金利による運用環境の悪化で、多くの基金の運用実績は「逆ざや」となった。また国際会計基準の導入で代行部分が企業の債務とみなされるようになり、経済界の強い要望で2000年代初め、代行部分の国への返上が認められた。

代行返上、企業は「身勝手」

私のように数年前に企業年金基金に着任したような世代にとっては、「代行返上」は言葉と意味は分かるけど、実態はピンとこない歴史辞典の1項目のような感じです。

田中 まあ、そうでしょう。「すったもんだ」のあれこれは後で詳しくお話しするとして、代行返上がテーマに遡上したときは、「企業って身勝手だなあ」と思いました。

身勝手? どういうことですか。

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