インフレや金利変動、地政学リスクなど市場の不確実性が高まる一方、リターン源泉の多様化を目的に、プライベート資産を組み入れる動きが広がっている。ただし、プライベート資産は評価頻度や流動性、キャッシュフローの特性が伝統的資産と異なるため、ポートフォリオ全体のなかで、いかにリスクを把握し、設計・管理するかが課題となる。アリアンツ・グローバル・インベスターズのアドバイザリーおよびソリューション部門であり、ポートフォリオ設計やリスク管理の助言を行うrisklab(リスクラボ)に、不確実性が高まる環境下でのポートフォリオ管理の考え方について話を聞いた。

マネージング・ディレクター
グローバル・ヘッド・オブ・リスクラボ
ティム・フリーデリッヒ氏
マネージング・ディレクター
ヘッド・オブ・プライベートマーケットソリューション
ラルーカ・ヨッフマン氏
「これから」のリターン特性を複数シナリオで検証
機関投資家を取り巻く環境や課題はどのように変化しているか。

フリーデリッヒ 過去20年間を振り返ると市場環境は大きく変化した。以前は比較的安定した環境で投資判断を行うことができたが、現在はインフレや金利変動、地政学リスクなど複数の不確実性が同時に意識されている。各資産のリスク・リターン特性は、「これまで」と「これから」で大きく変わってくるだろう。
こうした不確実性を前提に資産配分を考えるうえで役立つのが、リスクラボが開発してきた資本市場モデル(CMM)だ。このCMMは、GDP(国内総生産)成長率や物価上昇率、金利、クレジットスプレッド(上乗せ金利)などのマクロ経済ファクターに基づいて各資産の今後10年間の見通しを算出する。これは、将来の特定イベントを予言するものではなく、モンテカルロ・シミュレーションを用いて1万通りの経済シナリオを生成し、さまざまな市場環境におけるポートフォリオ全体の期待リターンや改善幅などを検証することなどに活用されている。
【図表1】資本市場モデル(CMM):経済的・統計的関連性に基づくモデリング

特に昨今の不確実性の高まりは、ポートフォリオ全体でリスクを把握する重要性を高めている。海外の機関投資家の間でも、投資目標の達成を起点としてポートフォリオ全体を統合的に設計する「トータル・ポートフォリオ・アプローチ」という考え方が広がっている。ポートフォリオのリスクと投資エクスポージャーを総合的に管理するには、プライベート資産も伝統的資産と整合的な枠組みで評価する必要がある。
平滑化バイアスに対処する「ビルディングブロックアプローチ」
プライベート資産を伝統的資産と同じ枠組みで管理する難しさはどこにあるか。

ヨッフマン 最大の難しさは、データの性質が異なる点だ。上場株式や債券は日々価格が観測される一方、プライベート資産の評価は一般的に四半期ごとが中心になる。そのため、評価額の変動だけを見るとボラティリティが低く見えやすくなるが、それは経済的リスクが小さいことを意味しない点に注意したい。
この平滑化バイアスに対処するべく、弊社では「ビルディングブロックアプローチ」を活用している。四半期ごとのリターン情報をベースに、パブリック市場のリスクファクター(金利や物価上昇率、経済成長率など)や非流動性リスクプレミアムなどプライベート市場固有の要素を組み込む。それにより、プライベート市場のリスクをパブリック市場と比較することを可能としている。
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