J-MONEYカンファレンス「不確実性時代に脚光浴びるヘッジファンドの活用で安定運用を追求」が2024年6月21日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。近年、企業年金をはじめとした機関投資家の間で再び投資意欲が高まっているヘッジファンドについて、その現状分析や活用方法など多角的な講演、パネルディスカッションが行われた。当日のプログラムから特別講演の内容を紹介する。

内外の投資家間でヘッジファンド増加の意向

木須氏
講師:木須 貴司
野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(NFRC)
シニアコンサルタント/ソリューショングループ グループリーダー

そもそもヘッジファンドとは何か、ということから説明したい。明確な定義はないが、①柔軟で自由度が高い運用戦略、②ベンチマークに対し、相対リターンではなく絶対リターンを追求、③成果主義的な報酬体系──というのが一般的な理解だ。自由度が高い分、より高いアルファが期待できる、とされている。

また、ヘッジファンドは「投機ではないか」という見方をされることがある。だが、市場の健全な価格形成の促進、流動性の提供という点で一定の社会的な意義があり、価格の歪みや市場の非効率性を運用成果の源泉とし、長期的な期待リターンはプラスであると考えられるため、「投機・ギャンブル」ではないと考える。

もう1つ、時折聞かれる疑問としてヘッジファンドは「資産クラスと定義できるのか?」というのがある。これに関しては、資産クラスの要件のうち少なくとも「内部的同質性」や「選択スキル」(期待した運用成果を得るために卓越した選択スキルが求められてはいけない)が該当しないことから、厳密には資産クラスと言えないと考える。

国内外の投資家調査を見ると、ヘッジファンドへの資産配分を増加させる意向が高まっている。【図表1】は当社の調査だが、2019年度と2023年度では2倍近い上昇を見せており、他社調査もおおむね同様の傾向にある。

【図表1】ヘッジファンドを「増やしたい」との回答割合の推移
ヘッジファンドを「増やしたい」との回答割合の推移
出所:各種資料よりNFRC作成

この背景にあるのは、主に以下の3点だ。

①流動性の確保:プライベート資産が好調だったため、低流動性資産の配分比率が増加。これに対する措置として、流動性の比較的高いヘッジファンドが注目されてきた
②債券がマイナス、金利上昇が続く懸念:為替ヘッジコストの高止まりで外国債券へ積極的に投資できない
③好調な株式・円安対応でリバランス:需要株式が好調なほか、為替オープンの資産も円安で残高が増加。リバランス資産の配分先としてヘッジファンドが脚光を浴びている

このように現在、投資家側のヘッジファンドへのニーズは高いわけだ。しかし、ヘッジファンドは必ずしも投資家にとってバラ色とは言えない傾向もみられる。それを説明するためにヘッジファンド業界全体の動きについて説明したい。

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