プライベートとパブリックのコラボレーションが重要
フォーラム中盤では、機関投資家のポートフォリオ構築に関する2つのパネルディスカッションが実施された。
最初は、ゆうちょ銀行営業部門地域金融法人部 常務執行役員の清水時彦氏、SBIファンド・マネジメントフィクス・インカム・ヘッドのラジェブ・ラッドハックリシュナン氏、イートン・バンスグローバル・インカム共同ディレクターのエリック・ステイン氏が登壇。「インカムとエクイティの役割の変化」について、自身の見解を披露した。
3人とも、プライベート・マーケットの可能性に言及。清水氏は、「米国では、上場企業よりもプライベート・エクイティ・ファームが保有しているポートフォリオカンパニーの数のほうが多い。日本でも、プライベート・デットではCLO(ローン担保証券)やダイレクトレンディング(中小企業向けローン)が人気だ。運用戦略においては、プライベート・マーケットとパブリック・マーケットのコラボレーションが重要になる」と指摘した。
もう一つのパネルディスカッションでは、金融機関や年金基金の運用スタイルなどに関して、ゆうちょ銀行 執行役員の市川達夫氏と、ニッセイ基礎研究所 金融研究部研究理事 年金総合 リサーチセンター長の徳島勝幸氏が意見を交わした。市川氏は「海外の機関投資家は、マーケットの変化に合わせて柔軟にリスクを取っている。数千億円の市場規模があり、多くの機関投資家がアプローチしている資産は自らも投資を検討し、分散の効いたポートフォリオを構築することが大事ではないか」と述べた。
徳島氏は、オルタナティブ資産およびプライベート資産は、多くの上場株式や上場有価証券ほど時価は振れないかもしれないが、流動性に欠けると警鐘を鳴らした。そのうえで、「ボラティリティ上昇時に、エクスポージャー全体をどうコントロールするかといった手段やツールは用意しておきたい」とアドバイスした。
フォーラムの最後には、機関投資家の間でESGと並んで注目度の高い「オルタナティブ」関連の2つのセッションが行われた。TGIMアセットの創業者兼社長グレース・チョン氏は「欧州不動産」を解説。日本の機関投資家が投資する場合は、イールド・リターンが明示されているものの足元の運用状況が見えづらいコミングルファンド型よりも、投資先が理解できるタイプのファンドから検討したほうがよいと助言した。
一方、ニュー・サウス・ウェールズ州貿易投資事務所コミッショナーで、オーストラリア大使館に勤務するピーター・ナイト氏は「インフラ投資」について語った。ナイト氏は、オーストラリアの確定拠出年金はインフラ資産に平均で8~12%投資しているが、日本ではほとんどゼロでGPIFでも0.13%程度と解説。「しかし、GPIFの場合、この0.13%のインフラ投資が5%のリターンを生んでいるのは興味深い」と述べた。インフラ資産では、設計・計画・資金調達段階の「グリーン・フィールド」タイプが投資チャンスは大きいとアピールした。
日本投資・運用フォーラムの会場には、年金基金関係者をはじめ多くの機関投資家の姿があった。スポンサーブースのスペースでは、情報交換する光景が数多く見られるなど活発な雰囲気に包まれていた。