近年、年金など長期投資性向の強い資金を運用する機関などで、将来の事業リスクや競争力などを勘案するため、ESG投資の採用が活発化している。ESG投資は欧米諸国を中心に進んでいるが、その評価や効果の測定は依然試行錯誤の段階にある。ESG投資を通じて社会に貢献することと、リターンの関係性ついて考察する。

長期的に超過収益を産む「理念」に支えられる投資

ESG投資については常にリターンの議論が注目されてきた。ESG投資でリターンといった場合、通常のリターン(以下、経済的リターンと呼ぶ)に加えて「社会的リターン」も考慮する必要がある。この社会的リターンの認識こそ、ESG投資をそれ以外の投資から一線を画させているものだ。

最も重要なことは、ESG投資は、社会的リターンが長期的に超過的な経済的リターンを産み出すという「理念」に支えられているということである。以下、経済的リターンと社会的リターンそれぞれについて検討してみよう。

資本市場の原則とは逆の投資理論が展開される

加藤 康之
首都大学東京特任教授
京都大学客員教授
加藤 康之
1980年に野村総合研究所入社。1997年に野村證券に転籍、2005年から執行役と金融工学研究センター長などを兼任。2011年より京都大学教授、2015年から現職。専門は投資理論、金融工学。著書に『金融工学時点』(東洋経済新報社)、『株式投資の科学』(角川書店)など

まず、経済的リターンから考えていく。最初に思いつく疑問は、「ESG投資のリターンは超過リターンをもたらすのか?」ということだろう。なお、ここではESG投資を「ESG評価の高い銘柄を組み入れるポートフォリオ(以下、ESGポートフォリオと呼ぶ)への投資」と定義する。

ESG評価が高いということは良い企業のはずだから、当然そのリターンも平均より高いに違いない、と考える人は多いかもしれない。しかし、投資理論的には逆になる。資本市場の基本的な原則は、リターンが高ければリスクも高く、リスクが低ければリターンも低い、というトレードオフの関係だ。

ESG評価が高い銘柄はリスクが低いと考えるのが一般的である。これを前提とすれば、ESG評価の高い銘柄のリターンは低く、ESG投資のリターンも低いと考えるのが投資理論の自然な帰結になるだろう。

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