米国資産バブル崩壊下でもドルは上昇する
- Fedの累計利上げ幅は4%を超える可能性
- 黒字急拡大が円高を招来した日本のバブル崩壊
- 米国の資産バブルは1980年代の日本に匹敵
- 今後のドル高ドライバーは米国の赤字縮小に
Fedの累計利上げ幅は4%を超える可能性
これまでFed(米連邦準備制度)は、本年3月のゼロ金利政策解除以降、累積2.25%利上げを実施してきた。
今月のFOMC(米連邦公開市場員会)においても0.50~0.75%の利上げ実施が予想されている。Fedの中では4%超の政策金利を示唆するホーキッシュなキャンプも出てきた。
黒字急拡大が円高を招来した日本のバブル崩壊
米国の政策金利引き上げが同国の資産バブルに与えるネガティブ影響を考えるうえで、1980~1990年代における日本の資産バブル形成とその崩壊を振り返ることは有益であろう。1980年第1四半期に0.4であった日本の株式時価総額(東証1、2部)の名目国民所得に対する比率は、資産バブル形成の過程で上昇を続け、1989年第4四半期には1.8と約4.5倍となった。
一方、1980年代半ばの円高不況を受けて2.5%まで引き下げられていた日本の政策金利は、1989年第3四半期からの段階的な利上げによって、1990年第4四半期には6.0%と累計3.5%引き上げられた。このような急激な金融引き締めを含めた資産バブル抑制政策(いわゆる、Lean against the Wind)の結果、資産価格は急落を始め、株式時価総額の名目国民所得に対する比率は1992年第2四半期には0.8まで急低下した(図表)。
このようにして、日本の資産バブルは崩壊し、その後、いわゆる暗黒の20年といわれる金融不安とデフレの時代が到来した。注目すべきは、資産バブル崩壊の過程で急激な貿易収支の縮小が大幅な円高を将来したことである。
資産バブル形成下の好景気によって1990年1月に前年比64.6%まで減少した日本の貿易黒字は、バブル崩壊後増加に転じ1991年11月には同107.9%の増加となった。一方、ドル円相場は、1990年4月の158円から1995年4月には84円まで約47%の円高となっている。
【図表】日本のバブル経済下の株価時価総額(対名目国民所得比)と政策金利
米国の資産バブルは1980年代の日本に匹敵
米国の株式時価総額の名目GDP(国内総生産)に対する比率(2007年第4四半期=1とする指数)を見ると、2009年第1四半期の0.57から、2021年第4四半期には2.53と約4.4倍となった。
上述の通り、Fedは、2022年3月以降すでに2.25%の利上げを実施し、株価時価総額の名目GDP比率は、同年第2四半期に2.12まで低下している。日本の資産バブル崩壊の過程を考えれば、米国の政策金利が4%を超えて引き上げられた場合の資産バブルに与えるネガティブな影響が十分憂慮される。
今後のドル高ドライバーは米国の赤字縮小に
9月7日に発表された7月の米国の財・サービス収支は707億ドルの赤字と3月の1069億ドルの赤字をピークに4か月連続の縮小となった。財・サービス収支は、2019年11月の387億ドルの赤字をボトムに本年3月まで拡大傾向を示していた。
今後のドル高は、米国の資産バブル調整下の貿易赤字の縮小が主導する可能性が出てきている。