2024年1~3月期の実質GDPは、個人消費と設備投資が4四半期連続でマイナスにより、3四半期連続前期比マイナスか

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
宅森 昭吉

2024年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は3四半期連続前期比マイナスになりそうだ。2月29日発表の鉱工業生産指数・1月速報値・前月比はマイナス7.5%も低下した。

全体15業種のうち、工場稼働停止などの影響による自動車工業の低下に加えて、汎用・業務用機械工業など14業種が低下、輸送機械工業(除く自動車工業)1業種が上昇という結果だった。

安全性試験の不正による一部自動車工業の操業停止の影響で大きく落ち込んだ。1月速報値の鉱工業生産指数・出荷指数からみて、内需の2大項目の個人消費と設備投資が4四半期連続でマイナスになる可能性が大きくなった。

個人消費の供給サイドの関連データである、耐久消費財出荷指数の1月対10~12月平均比はマイナス11.7%と大幅なマイナスになった。

1~3月期がプラスになるには残りの2カ月が各々前月比+12.9%増加しなければならない。耐久消費財出荷指数の弱さは乗用車新車販売台数の1月対10~12月平均比がマイナス13.2%と大幅なマイナスであることと整合的だ。非耐久消費財出荷指数の1月対10~12月平均比はマイナス2.4%のマイナスだ。

設備投資の供給サイドの関連データである、資本財出荷指数(除く輸送機械)の1月対10~12月平均比はマイナス4.0%のマイナスになった。建設財出荷指数の1月対10~12月平均比はマイナス6.1%のマイナスだ。

日銀の実質輸出の1月対10~12月平均比はマイナス1.9%のマイナスで、控除項目の実質輸入の1月対10~12月平均比はマイナス7.1%のマイナスだ。1月対10~12月平均比からみるとモノの外需は前期比プラス寄与になりそうだ。

【図表】内閣府:実質GDP成長率と主な項目
内閣府:実質GDP成長率と主な項目
※上段:前期比、( )内は前期比年率、下段:前年同期比。[ ]内は上段:前期比寄与度、下段:前年同期比寄与度。 2023年10-12月期第1次速報値現在
出所:内閣府

1月の景気動向指数・一致・先行CIとも前月差2カ月ぶりに下降を予測

2024年1月速報値の一致CI(コンポジット・インデックス)は前月差マイナス3.4程度の下降と予測する。3月4日に発表される営業利益の影響で11月と12月の前月差が0.1ポイントずつ改善すると仮定した。前月差は2カ月ぶりの下降になると予測される。

一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差寄与度プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列が前月差寄与度大幅なマイナスになろう。

1月の先行CIは前月差マイナス0.7程度の下降と予測する。2カ月ぶりの下降だろう。速報値からデータが利用可能な9系列では、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDI(ディフュージョン・インデックス)の5系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積の4系列が前月差寄与度マイナスになると予測する。

表面的に弱い経済指標が出ても、企業経営者の間に悲観的な景況感が出回らないことを望みたい

2024年3月8日発表予定の1月の景気動向指数の景気の基調判断が「足踏み」に下振れる可能性がある。1月の一致CIが前月差下降で、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差の3カ月累計がマイナス1.17程度で、ぎりぎり1標準偏差のマイナス1.16を上回るマイナス幅になると予測される。

景気の基調判断は、「足踏み」に下方修正されるための条件、「当月の前月差の符号がマイナス」かつ、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(1.16)以上」という条件を満たすからだ。

ただし、3月4日に10~12月期の法人企業統計が発表され、10月から12月の営業利益が1月速報値の段階で加わることが、3カ月移動平均の前月差3カ月累計にかなりの好影響を及ぼした場合には、景気の基調判断が「改善」に留まる可能性がある点には留意する必要がある。

足元の景気はもたつきがあるものの、緩やかな回復基調にあると判断できる。例えば、実質GDPは2023年10~12月期で2四半期連続前期比マイナスだが、前年同期比でみると、2021年4~6月期から2023年10~12月期まで11四半期連続でプラスの伸び率が続いている。

潜在成長率が少しは高まったとはいえ、まだ0%台後半の低水準とみられるため、振れの大きい前期比でみると、ちょっとした悪材料で、全体も悪化しやすい点に注意が必要だ。

また、景気動向指数の一致CIによる景気の基調判断も、コロナ禍で季節調整が微妙な中、極めて緩やかな上昇局面では、一部自動車工業の操業停止の影響程度の材料で判断に影響を及ぼす可能性がある。

もし、「足踏み」に下方修正された場合には、景気動向指数の景気の基調判断が、「足踏み」から「改善」に上方修正されるために、「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が上昇 、かつ当月の前月差の符号がプラス」になることが必要で、過去の数字が大幅に改定されなければ早くても4月速報分が発表される6月7日になってしまう。

表面的に弱い経済指標が出ても日銀の金融政策に影響は及ぼさないだろうが、企業経営者の判断に与える影響は心配だ。現在、賃金の引き上げや、高い計画の設備投資の着実な実施が求められる局面で、企業経営者の間に、悲観的な景況感が出てこないことを望みたい。