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マクロ経済 実質賃金と個人消費の回復に潜む盲点。高齢化で賃金上昇効果が低減
欠如する年金収入の議論
2024年は、歴史的な株高と賃上げといった良好な金融・経済環境が実現したものの、国民の多くは依然として景気回復を実感できておらず、食料や日用品の相次ぐ値上げで生活が厳しいという声も少なくない。実際、物価高という逆風の下で個人の節約志向は根強く、GDP(国内総生産)統計の実質家計最終消費支出(個人消費)は停滞している。
このような状況を打破するカギとして注目されているのが実質賃金の動向だ。近年は、相対的に高水準の賃上げ率を達成しても、それを円安進行やエネルギー・食料価格高騰などに伴う高インフレ率が上回り、実質賃金の前年比はマイナス圏で推移してきた。今後、国民が景気の回復を実感し、個人消費がしっかり上向くには実質賃金のプラス転換が必要となる。
こうした中、2024年の春闘の歴史的な賃上げ率を背景に、ようやく実質賃金のプラス転換の道筋を見通せるようになってきた。連合(日本労働組合総連合会)が公表した春闘の最終集計によると、定期昇給分とベア(ベースアップ)を合わせた平均賃上げ率は5.10%と、1991年以来33年ぶりの高水準となった。また、賃金水準の底上げ度合いを示すベア率は3.56%となり、この水準は足元のインフレ率を明確に上回る。
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