年金資産運用・基礎の基礎【実務編】 【ポートフォリオ構築のABC】第8回(最終回)PDCAサイクルを回し続ける〜ポートフォリオあくまで自主管理。外部リソースも上手に活用
【ポートフォリオ構築のABC】は今回が最終回です。あらゆるビジネスにおいて重要なPDCAサイクル。長期安定投資を旨とする企業年金の資産運用業務にとっては、最も大事な基盤と言えるでしょう。そこで連載の過去7回分を整理しつつ、PDCAサイクルを回し続ける意義をラッセル・インベストメントの金武伸治さんに解説していただきます。
年金資産運用サイクルの全体像
改めてとなりますが、企業年金資産運用にとってのPDCAサイクルの重要性を教えてください。
金武 年金資産運用におけるPDCAサイクル、つまりPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(対策・改善)について、これまでに【ポートフォリオ構築のABC】で説明した内容と照らし合わせてみましょう。
【図表1】は年金資産運用サイクルの全体像を示したものです。この全体像に、これまで各回で説明してきた内容をつなぎ合わせてみます。
Plan:将来の安定給付の基礎
まず、年金資産運用におけるPlan(計画)とは?
金武 【図表1】の①~③のプロセスがPlanに該当します。なお③については、Do(実行)の一部であるとも言えます。
① 運用目標(目標リターン)の設定では、予定利率や積立比率などを考慮した目標リターンの設定を行います。基本的には、「目標リターン=予定利率+運用・運営コスト」となりますが、積立剰余の場合には、十分な積立資産があるという理由で、今後の目標リターンおよびリスクを低下させるという選択肢が1つ。また、よりリスクを負う余裕があることから、将来的な給付増加などに備えて今後の目標リターンおよびリスクを高めるという選択肢もあります。
② 政策アセットミックス(基本ポートフォリオ)の策定では、年金ALM分析を実施し、許容可能なリスク、特に将来的な財政状況の変化や下値リスクなどを把握しながら、目標リターンの達成が期待できる資産配分比率を決定します。また、政策アセットミックスに組み入れる個別資産のリスク特性を理解しておくことが重要となります。特に流動性の低いプライベート・アセットなどを組み入れる場合には、将来のキャッシュフローや制度変更の可能性なども考慮しておく必要があります。
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