ドイツ証券は2016年5月19日、メディア向けの金利・為替セミナーを開催した。米国の利上げの行方が注視され、各国中央銀行の金融政策に手詰まり感が見えるなか、投資家はどのように行動するべきか。同社金利ストラテジストの山下周氏と為替ストラテジストの田中泰輔氏が見通しを語った。

ドイツ証券セミナー
金利・為替の動向を見るうえでは、米国の景気回復と利上げがポイントになるという。

山下氏は現在の市場について「確かなことは、日本銀行の選択肢が現状維持か追加緩和しかないことだ」と指摘した。加えて、市場に最大限のサプライズを与えるため、次の金融緩和にはマイナス金利幅拡大とQQE(量的質的金融緩和)の合わせ技を予想した。

「追加緩和なら円金利はブル・フラット化(長期金利の低下に伴いイールドカーブが平坦化)する。何もなければ円金利は動かないのだが、一時的な金利上昇局面もあり得る。日本国債は(相場が一時下がる局面で買う)押し目買いでいいだろう」

不透明要因は、米国景気の回復度合いと利上げの有無だ。山下氏は利上げとなった場合、米国長期債については積極的な買いよりも、利上げの織り込み具合に合わせて少しずつ買うスタンスを推奨する。対して米国景気の減速が織り込まれるようなら「米国でブル・フラット化となるので、長期債よりも10年債への投資が推奨される」とした。

続いて田中氏は、これまでのドル円の動向として、2015年に続いた115~125円のレンジの相場が年初のリスクオフで下抜けて、需給が一気に円高側に傾いたと言及。その地合いに乗って、5月頭にかけては思惑的なドルショート・円ロングのポジションが過度に積み上がり、相場が進みあぐねたため「短期的に、巻き戻しによって円安ドル高方向に動く場面も出やすくなった」と解説した。

ドル円の展望については、やがて米国経済が堅調さを示し、複数回利上げが行われる観測が高まればドル高の下地となる。しかし、田中氏は「今後数カ月は、米国の経済回復のすそ野が狭まる方向にあると見ており、ドル安円高の地合いが繰り返し現れやすい」と説明。6~8月は、米国経済がしっかりしているというストーリーが市場で共有されない限り、「ドルが持続的に上がるのは難しい」との見方を示した。