独立系運用会社のコムジェスト・グループでエマージング株式の運用を担当するギャリー・ピンゲ氏とデイビット・レイパー氏に、新興国株式市場の見通しなどを聞いた。(取材日:2016年7月14日)

コムジェスト・グループ
コムジェスト・グループ
アジア株式担当(除く日本)
アナリスト 兼 ポートフォリオマネージャー
ギャリー・ピンゲ氏(左)
エマージング市場担当
アナリスト 兼 ポートフォリオマネージャー
デイビット・レイパー氏(右)

資源価格の下落などの向かい風にさらされている新興国市場。コムジェスト・グループ エマージング市場担当 アナリスト 兼 ポートフォリオマネージャーのデイビット・レイパー氏は今後の見通しについて、「新興国のGDP(国内総生産)成長率は、これまで先進国より高い伸びを示してきた。しかし、新興国のGDP成長率は現在、先進国とほぼ同程度の水準にまで鈍化している。新興国株式のトレンドの転換点が近いと見ている」との考えを示す。

足元では、新興国の市場環境は良好とはいえないものの、「長期で見れば新興国市場は成長する構造を持っている」と指摘するのは、コムジェスト・グループ アジア株式担当(除く日本) アナリスト 兼 ポートフォリオマネージャーのギャリー・ピンゲ氏だ。

「新興国市場の成長エンジンとしては、農村部から都市部への労働力の移動や高齢者層の増加を背景とした消費構造の変化、インフラ投資中心から消費主体経済への移行などがある。今後、新興国経済にもたらされる産業構造の変化は多くの投資機会を生みだすだろう」(ピンゲ氏)

ただし、コムジェストの運用哲学は、長期的な観点から個別企業のファンダメンタルズやEPS(一株あたりの利益)に配慮した銘柄の選別を行うこと。「新興国市場のマクロの動きは、我々の運用には関係がない」とレイパー氏は強調する。

また、中国経済に対して懐疑的な見方が根強いが、レイパー氏は「中国国内には成長が期待できる優良な企業が複数存在する。例えば、他のアジア諸国に比べてバスの普及率が低いため、中国バス市場の規模は将来的に3~4倍の成長が見込まれている。こうした市場の成長トレンドに乗って持続的に利益を出せる質の高い企業を丁寧に選別することが重要だ」と言う。

同社のアジア株式戦略における2015年のリターンは、市場平均を大幅に上回っている。ピンゲ氏は「独立系運用会社としてベンチマークにとらわれない機動的な運用と、短期的な市場のノイズにとらわれない厳格な投資哲学が運用の成果に繋がっている」と語った。