サービス価格の上昇ペースも鈍ってきた

7月12日に米労働省が発表した6月CPI(消費者物価指数)は、事前予想を下回る結果となった。実績値と事前予想とのずれは大幅ではなかったが、債券市場と為替市場は比較的大きな反応を示した。

6月CPIは前月比プラス0.2%、食料・エネルギーを除くコアCPIも同じくプラス0.2%となり、それぞれ事前予想を0.1%ポイント程度下回った。総合CPIの前年比上昇率はプラス3.0%と12カ月連続で低下し、2年3カ月ぶりの低水準に達した。

食料・エネルギーを除く財コアは前月比マイナス0.1%と、2022年12月以来の下落となり、財だけを見れば米国はデフレ状態である。他方、食料・エネルギーを除くサービスコアは前月比プラス0.3%となお上昇を続けているが、前月の同プラス0.4%からは上昇幅を縮小させている。高めの賃金上昇率の影響でサービス価格の上昇率は依然高水準を維持してはいるものの、その動きも着実に鈍ってきている。米国は歴史的な物価高騰という危機を脱しつつあるのではないか。

欧米の大幅利上げが長期インフレ期待の安定に

2022年以来、欧米各国では歴史的な大幅利上げ(政策金利引き上げ)が実施されてきた。その結果、政策金利は既に景気に対して抑制的な水準にまで引き上げられている。さらに、欧米では銀行が貸出に慎重な姿勢に転じているため、両者の影響から、先行き経済の減速懸念もある。それにもかかわらず、物価上昇率が期待したほどには低下していないため、欧米の中央銀行はなおも利上げを継続する姿勢だ。

このように、中央銀行がインフレ警戒的であり物価の安定確保に強い姿勢で臨んでいることは、中長期のインフレ期待(予想物価上昇率)の安定に貢献している。そうした傾向が特に顕著なのは、2022年、他国・地域に先駆けて大幅な利上げを始めた米国だ。

BIS(国際決済銀行)は6月に公表した年次経済報告書の中で、金融市場と個人について、主要国での長期(10年)インフレ期待を計測している。

2023年6月時点で米国での金融市場の長期インフレ期待は、FRB(米連邦準備制度理事会)の物価目標値に近い年平均プラス2.3%、個人(家計)についてはプラス3.1%と比較的安定した水準を維持している(図表1)。物価の高騰が始まる前の2020年末時点と比較しても、長期インフレ期待の上昇は小幅である(図表2)。

この間に、実際の消費者物価が前年比で2桁近くにまで達したにもかかわらず、金融市場も個人も、「物価の高騰は持続的でない」との見方を一貫して維持してきたのである。

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