各地の企業年金を訪問して、年金資産運用の現状や考え方を伺うシリーズ。今回は大和ハウス工業企業年金基金です。日本の企業年金の運用担当者として最も先進的な存在であり、海外でも知られる運用執行理事の山根透(やまね・とおる)さんに、高いパフォーマンスの舞台裏を尋ねました。

大和ハウス工業企業年金基金の概要

  • 所在地/大阪市北区梅田
  • 設立年月/1966年11月(厚生年金基金)、
    2004年6月(代行返上し、企業年金基金)
  • 資産総額/5111億円
  • 加入者数/3万1328人 受給者数/8370人 成熟度/26.7%
  • 予定利率/3.0% 期待リターン/4.5%
    (いずれも2023年3月末現在)

投資先視察などで中国出張

JR大阪駅から徒歩5分の大和ハウス工業本社に、山根さんを訪ねたのは5月末の水曜日だった。山根さんは前週末までの1週間、中国の北京、武漢に出張して帰国したばかり。

山根 ドイツ拠点のPE(プライベート・エクイティ)に投資しているのですが、そこが北京で開催した投資家イベントに出席するためです。併せて、このPEが投資する先端医療機器メーカーなどを視察するために武漢まで行ってきました。

これに先立つ1月には米国ニューヨークで、ベンチャーキャピタル投資家や大学ファンド関係者などが出席するパネルディスカッションにパネリストとして登壇したそうですね。

山根 私どもの投資に対する考え方や、日本の企業年金の実情などを説明しました。欧米やアジアの投資会社などとのリレーションがあるせいか、海外の専門誌から電話による取材が入ることもあります。時折、私が話していないことが紙面に載っていて困ることもありますけどね。

山根透氏
母体は極めて多彩な事業を展開しており、ミニ胡蝶蘭(左下)の栽培もその1つ

コロナ前年は年9回の海外出張

私も企業年金基金の常務理事として資産運用を担当していましたが、オフィスで運用商品の四半期報告を聞いたり、不動産の物件を視察したりといった程度しか経験がありません。そんな私からすると、山根さんは驚異的な活動ぶりに映ります。新型コロナウイルス流行前の2019年には海外に9回、延べにすると約2カ月間も出張したとのこと。

山根 自分で「3大陸横断ツアー」と称しているのですが、年に一度、香港やシンガポールなどアジアから入って、ヨーロッパに行き、最後にアメリカやカナダ。連続して3週間程度で回ることもありました。既に投資していたり候補先と見込んでいたりする運用会社のオフィス訪問に始まり、不動産やインフラの現場視察も行います。契約しているファンドのプライム・ブローカー、監査法人そしてアドミニストレーターなども、機会があればできるだけ訪ねるように努めています。

なぜ、そこまでするのでしょう。

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