気候変動に続くESG投資の分野として注目される生物多様性。2021年には情報開示フレームワークとしてTNFDが発足し、2022年12月にはCOP15で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。最新動向や今後の課題を解説する。

  • COP15にて「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された
  • TNFDなどの情報開示フレームワークが登場
  • リスク・企業の取り組みの評価には、特有の課題の考慮が不可欠

COP15でビジネスへの影響と資金に関する議論が活発化

太田 珠美

大和総研 金融調査部
ESG 調査課長
太田 珠美
主任研究員慶應義塾大学法学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科ファイナンス専攻専門職学位課程修了。2003年大和証券株式会社に入社、リテール営業や経営企画部などを経て2010年に株式会社大和総研に転籍。日本株式ストラテジスト、企業金融の調査などに従事。2019年より現職、企業の資金調達・運用に関する調査を担当している

世界経済フォーラムによると、世界のGDP(国内総生産)の半分以上を占める約44兆ドルが、何らかのかたちで森林や土壌、水といった「自然資本」に依存しているという。人類は自然の恵みを享受して日々生活を営んでいるが、この自然資本を形成する柱となるのが「生物多様性」だ。生物は、生態系、種、遺伝子のレベルで多様に存在しており、他の生物と繋がりかかわり合いながら生態系の絶妙なバランスを保っている。

しかし、人類による自然破壊で生物多様性は著しく減少し、多くの生態系にマイナスの影響が及んでいる。世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2023年版」では、今後10年間のグローバルリスクとして生物多様性の喪失や生態系の崩壊がトップ5に位置づけられた。とりわけビジネスにとっては、物理リスク、訴訟・法規制リスク、移行リスク、システミック・リスクがあるとされ(図表)、生物多様性の保全は気候変動リスクと並んで、産業界ひいては投資家にとっても、火急の問題になっている。

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