• 円安のための三本の矢はもはや対外直接投資のみ
  • いよいよ米国政府の支持を失った日本の円安政策
  • 日本の財政破綻ストーリーに現実味はあるのか

円安のための三本の矢はもはや対外直接投資のみ

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

第二次安倍晋三政権が2012年の発足以来矢継ぎ早に導入した円安誘導のための三本の矢(量的緩和、対外証券投資の増大、対外直接投資の増大)は、すでに二本に政策転換がなされている。

さらに、今回、円安を支えた米財務省の容認姿勢も過去のものとなった。日本の財政破綻懸念による円安ストーリーにも黄信号が灯っている(詳細は、2026年9月4日発行のJ-MONEY本誌秋号掲載の拙稿をご参照)。

いよいよ米国政府の支持を失った日本の円安政策

米財務省による円安容認姿勢はすでに過去のものとなった。同省は、2025年に6月公表した半期為替報告書のなかで、日銀の金融引き締めによるドル高円安の是正に期待を寄せるとともに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による対外証券投資が招来する競争的な通貨切り下げをけん制した。2026年1月には、同省によるニューヨーク連銀を通じたレートチェックが久方ぶりに実施された。

米国のベッセント財務長官は、2026年6月の講演後に質疑応答において、「人々が強いドルについて語るとき、それはブルームバーグ・ドル指数のことではないと思う」と述べるとともに、低コストの製造業国による自国通貨の抑制は米国に不利に働く可能性があるともコメントした。

さらに米財務省は、2026年7月の半期為替報告書のなかで、円は大きく過小評価されていると明言した。同月30日に、ベッセント長官も同様の発言を行い、翌31日には米財務省が、ユーロ売り円買い介入を実施したと英紙は報じている。今回のオペレーションが米財務省による為替介入だとすれば、2025年第4四半期以来のこととなる。ドル円相場は、現在フェアバリュー(PPP)に対して91%も過大評価されている(図表)。

■ドル円相場と購買力平価(PPP)の推移(円/ドル)
ドル円相場と購買力平価の推移
出所:日銀などから筆者作成

日本の財政破綻ストーリーに現実味はあるのか

日本の財政破綻懸念による円安ストーリーにも黄信号が灯っている。わが国中央政府の総債務残高(国債と財投預託金残高の合計)は、2020年第2四半期に付けた対GDP比199%の既往ピークから2026年第1四半期には同155%まで改善している。

また、この同155%の総政府債務残のうち同72%を、量的緩和の結果として日銀がファイナンスしている動きを問題視する向きがある。しかし、日銀のバランスシート急拡大にもかかわらず、2026年7月の東京都区部のコアCPI(消費者物価指数)は前年比1.3%と、為替レートや原油価格の影響を排除したインフレは非常に抑制されている。

加えて、財投預託金残高(財投)が同82%にも達していた1999年末に比べれば、現在の財政健全性は当時より改善していると言えよう。財投は、郵貯や公的年金にプールされた家計部門の黒字を中央政府がオフ・ザ・マーケットで調達する不透明性ゆえに、2000年代にほとんどが撤廃された。対して、日銀による国債保有は、市場を通している分だけ、財投に比べて財政の健全性が担保されていると言える。

今回の消費税率引き下げも、まったく容認できないとも言えまい。そもそも、わが国の食品に係る消費税率(8%)は、現在G7(主要7カ国)で最高である。重要なことは、今後、プライマリーバランスの黒字化を確保するために、滞りなく漸次、食品以外にかかる消費税率を10%から引き上げていくことと思われる。

わが国経済が、巨額の国内貯蓄をバックに、政府支出に依存した発展を遂げてきた歴史を軽視してはならない。また、放漫財政は、もはや先進諸国共通の問題である。経常収支とネット対外ポジション(NIIP)の両方において黒字国であるわが国が、財政破綻に陥る可能性が極めて低いことが浸透すれば、円安は終了すると思われる。