豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化にともなう財源確保のため、大学にとって資金運用は中長期の財政基盤を支える重要なテーマとなっている。大学基金の運用担当者や有識者の声を通じ、運用戦略と今後の展望について概観する連載「大学基金の運用戦略」。2025年7月に「九州大学エンダウメント型基金」を創設した九州大学で、基金担当を務める園田佳巨理事と、財務戦略担当(CFO)として資産運用を統括する木村賢治理事に話を聞いた。
2025年7月に「九州大学エンダウメント型基金」を創設

理事
財務戦略(CFO)、資産運用
木村 賢治氏
九州大学の資金運用は、どのような変遷をたどってきたか。
木村 国立大学法人は、国が定める制度の範囲内で資金運用を行う。2004年の法人化以降、本学は定期預金や日本国債、担保付き電力債など、確定利回りの安全資産で運用してきた。
転機となったのは、2017年の制度改正である。文部科学大臣の認定を受けることで、寄附金などを原資とする余裕金を、より収益性の高い金融商品で運用できるようになった。本学は2018年に認定を受け、外国債券や無担保社債へ運用対象を拡大した。
加えて、2021年11月の指定国立大学法人への指定を受け、さらに運用できる範囲が拡大したことから、現在は投資信託を通じた株式運用や外部委託運用にも取り組んでいる。2025年には適格機関投資家の届出を行い、アセットオーナー・プリンシプルの受け入れも表明した。
2025年7月に「九州大学エンダウメント型基金」を創設した。従来の「九州大学基金」とは、どのように異なるのか。

理事
九大基金
園田 佳巨氏
園田 九州大学基金は2011年に創設し、留学支援や経済的に困窮する学生への奨学金、教育研究活動などに活用してきた。一方、多くの寄附をいただいても、支援に充てるたびに残高が減少するため、大学を永続的に支える仕組みとしては課題があった。
そこで、「一過性の支援で終わらせず、永続的な支援につなげる」との課題認識の下で創設したのが、エンダウメント型基金である。当面は、元本からのペイアウトを抑え、基金を成長させていく方針だ。将来的には、運用益を教育研究活動への支援と運用原資への繰入れに充て、基金の成長と支援の拡大が両立する好循環を目指す。
エンダウメント型基金の創設を大きく後押ししたのが、本学卒業生で総長特別顧問を務めるロバート・ファン氏だ。ファン氏にはQREC(ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター)や、学生時代に創設したアイスホッケー部への寄附などを通じ、長年にわたり本学へご支援をいただいてきた。2025年10月時点の寄附総額は約3億円を超え、さらに5億円規模の追加寄附を申し出ていただいた。2025年12月に受け入れた2億円超を主な原資として、エンダウメント型基金の運用を開始した。今後も、基金運用などについて助言を受ける。

伝統4資産で167億円を長期運用
足元の運用状況は。
木村 本学では、資金の使用時期に応じて短期運用と長期運用に分けて管理している。1年未満で使用する予定の資金は主に定期預金で運用し、1年以上運用できる資金は、国内外の株式・債券を組み合わせたポートフォリオで運用する。2026年3月末時点の短期運用額は約254億円、長期運用額は約167億円である。

※単位未満切り捨てのため、表上の計算が合わない箇所がある
※外貨建てについては、各期末の為替レートを適用
※運用益及び収益率は、評価損益額の増減等を加味した総合収益額及び時間加重収益率で算出しているが、満期保有目的債券については、 時価評価額を加味していない
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