不動産投資顧問会社のラサール インベストメント マネージメントでアジア太平洋地域 投資戦略・リサーチ部責任者を務めるエリーシャ・セ氏に、注目の不動産市場などを聞いた。(取材日:2019年8月8日)

エリーシャ・セ氏
ラサール インベストメント マネージメント
アジア太平洋地域
投資戦略・リサーチ部責任者
エリーシャ・セ

日本の機関投資家の関心が高い不動産市場は。

 世界経済は、グローバルな低金利環境に加えて、貿易摩擦の激化と長期拡大を背景とした成長の鈍化傾向が顕著になってきているが、アジア太平洋地域の不動産ファンダメンタルズは総じて健全とみている。中国は短期的に弱含んでも中長期的にみれば金融財政政策が下支えするだろう。日本の不動産市場に相対的に耐久性があるとみている。セクターでは世界的にもロジスティックス(物流施設)が注目を集めている。オフィスは選別的に臨んでいる。

日本、中国以外のアジアの国で関心を集めている国は。

 シンガポールは輸出入を通じて中国と経済関係が深いため、米中貿易摩擦の負の影響を受けやすい。一方、シンガポールは、自国通貨の売買などによって金利を下げて、経済成長の鈍化を避ける手段をもっている。このような官主導の為替・金利管理でシンガポールの不動産市場は今後も安定成長が見込めるうえ、金利低下に伴う現地通貨の下落は、日本などの海外機関投資家が投資妙味のある物件に割安で投資できることを意味する。

注目の物件・セクターは。

 シンガポールのオフィスの空室率は歴史的な低さで、この傾向は2022年頃まで続くだろう。ただし、足元の不動産価格はかなり高値水準にある。日本の機関投資家の多くは、当社のように現地事情に通じたローカルチームを持つ運用会社と組んで物件を厳選したうえで投資している。

米欧の不動産市場ではどのような物件・セクターを推奨しているか。

 米国ではEコマース拡大の恩恵を受けやすい物流施設のほか、賃貸住宅でも郊外で学校が近い物件やオフィスでも医療施設が入居している物件などは人口動態といったトレンドと合致していることもあり価格上昇が見込める。英国はブレグジット(EU<欧州連合>の離脱)の長期化でポンドが弱含んでいる。高水準のイールドスプレッド(長期金利と不動産利回りの差)も踏まえると、ロンドンのオフィス物件は魅力的な投資対象だ。