ベアリング・アセット・マネジメントでアジア株式チームの責任者を務めるヒュンジン・リー氏に、アジア株式市場の動向などを聞いた。(取材日:2016年7月7日)

ヒュンジン・リー氏
ベアリング・アセット・マネジメント
アジア株式チーム責任者
ヒュンジン・リー

機関投資家はアジア株式をどのように見ているか。

リー ここ数年は日米欧の先進国株式が好まれているが、中長期的にはアジア株式のほうが投資魅力はある。アジアは世界で最も高いGDP(国内総生産)成長率が見込める地域だからだ。

マクロ的な影響を受けにくい点もアジア株式の特長だ。例えばロシアや南米は資源価格、日欧は金融政策に大きく左右されるものの、アジア株式は堅調なファンダメンタルズが支えになっている。

ブレグジット(英国のEU離脱)の影響はどうか。

リー ドミノ離脱の加速などでグローバルレベルの危機に陥らない限り、アジアへの影響は限定的だろう。ブレグジットや原油価格、為替の動向などで短期的にボラティリティは高まるかもしれないが、長期的には成長が期待できる地域と言える。

投資先として有望な国・地域、セクターは。

リー アジアは国・地域によって発展段階が違う。インドやインドネシアのように成長余地が大きいところもあれば、韓国や台湾のようにすでに成熟段階に入ったところもある。それぞれの発展レベルによって成長分野が異なり、インドネシアでは消費関連、台湾や韓国ではエレクトロニクス関連が有望と見る。

ただし、我々は国・地域、セクターで投資先を判断しているわけではない。あくまでも高い成長が見込める企業を投資対象にしている。将来のリーディングカンパニーになりそうな企業を発掘するため、ベアリングではクォリティGARP(Growth at reasonable price:高い成長が期待できる割安な銘柄に投資する手法)に基づいて、優れたビジネス・モデルや強固なバランスシートなどを持ち合わせた企業をボトムアップ・アプローチで発掘する。

注目している銘柄は。

リー 中国のネットサービス大手のテンセントだ。他の先進国と同様に中国でも1980年~2000年に生まれ、デジタルネイティブと呼ばれるミレニアル世代が消費のけん引役として注目されている。テレビや新聞などのオールドメディアから、動画配信といったニューメディアへのシフトが進んでいくなか、素晴らしいコンテンツとプラットフォームを持つ同社の成長が期待されている。

ミレニアル世代の台頭によって中国では、「娯」(より楽しく)と「康」(健康で)に該当する外食サービスやヘルスケア、教育などの市場も伸びていくだろう。