• 1990年代後半にも円キャリートレードが市場を席巻
  • 当時2日間2.8兆円の円買い介入でも円安の流れは不変
  • 結局ロシア通貨危機と大手ファンド破綻が円安の終止符に
  • 現在の円安局面に当時ほどの過熱感はまだ見られない

1990年代後半にも円キャリートレードが市場を席巻

梅本徹
J-MONEY論説委員
梅本 徹

図表のJPY1は、1995年4月以降1998年8月までの3年超に及ぶ円安局面を、その始点である1995年4月19日を100としてプロットしたものである。この時の円安は、今回と同様、欧米ヘッジファンドによる円キャリートレードによってもたらされた。

1995年4月25日に米ワシントンDCで開催されたG7財務省・中央銀行総裁会議の共同声明において、「(ドルを)秩序ある形で反転させることが望ましい」と盛り込まれた上、ルービン米財務長官がその後も「ドル高は米国の関心事」との発言を繰り返したことで、投資家の間ではドル買いに安心感が生まれた。

さらに日銀は、それまで1.75%であった公定歩合を1995年4月14日に1.0%、9月8日に0.5%、また、1998年9月9日には無担コール翌日物金利を0.25%に引き下げたことで、欧米ヘッジファンドの間では円を調達通貨とする円キャリートレードが投資戦略上のブームとなった。

【図表】円安局面のドル円相場

円安局面のドル円相場
出所:米連邦準備制度など

当時2日間2.8兆円の円買い介入でも円安の流れは不変

日本の金融システム危機も円売りを助長した。この結果、ドル円相場は、1995年4月19日の81円12銭から約3年4か月後の1998年8月11日には147円14銭と、81.4%の上昇を記録した。この間、「日本売り」を阻止するために、政府日銀は1997年12月17~19日に1兆591億円、1998年4月9~10日に2兆8158億円の単独円買い介入を実施した。

また同年6月には、人民元切り下げを嫌う中国政府の依頼を受けたドル売り円買い日米協調介入(米国833百万ドル、日本2312億円)も実施されたが、いずれも効果は限定的であった。

結局ロシア通貨危機と大手ファンド破綻が円安の終止符に

ところが、1998年8月17日にロシア政府が90日間の対外債務の支払い停止を宣言(事実上のデフォルト宣言)したことで、同年9月にはLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が事実上の破綻に追い込まれた。

これを契機に、世界中の金融市場において資産価格が急激に調整されたため、欧米ヘッジファンドは大幅な損失と過度な担保不足に陥り、それまで積み上げてきた多額の円キャリートレードを一斉に手仕舞うこと余儀なくされた。

ドル円相場は、1998年10月19日に114円46銭と、前述のピークから22.2%の急落を見せた。このとき、多数の大手欧米ヘッジファンドが倒産に追い込まれたことは記憶に新しい。また、1997年5月にも、アジア通貨危機の勃発によって12.1%のドル安調整が起きている。

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