6月調査日銀短観が示唆する堅調な2022年度の設備投資

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント
理事 チーフエコノミスト
宅森 昭吉

2022年6月調査の日銀短観では2022年度の大企業・全産業の設備投資計画(含む土地投資額)前年度比はプラス18.6%である。3月調査のプラス2.1%から大きく上方修正となった。

また、中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は6月調査ということで、まだ弱くマイナス1.4%であるが、3月調査のマイナス11.4%からはこちらも順調に上方修正となった。全規模合計・全産業の2022年度設備投資計画・前年度比はプラス14.1%である。

6月調査の大企業・全産業の2022年度の計画が高めの伸び率になったのは、6月調査の2021年度設備投資・実績が、ウクライナ情勢、中国のロックダウンの影響などの不透明材料による判断の慎重化により実施を見送った企業が多かったため、3月調査時点の計画に比べて大きく鈍化し、比較対象になる前年の水準が下がった影響が大きいとみられる。2021年度の大企業・全産業の設備投資実績は前年度比マイナス2.3%の減少で、3月調査の計画・前年度比プラス5.9%の増加から大きく下方修正となった。

一方、2021年度の中小企業・全産業の設備投資実績は前年度比プラス6.2%の増加で、3月調査の計画・前年度比プラス4.3%から上方修正となった。中小企業の計画は、最初の3月調査はかなり慎重で、実績がわかる翌年6月調査に向け調査のたびに上方修正されるという傾向があるが、2021年度でも見られた。

日銀短観ではGDP(国内総生産)の設備投資の概念に近い、ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースに関する計画調査も行っている。全規模合計・全産業の設備投資の2022年度の前年度比はプラス13.1%で、3月調査の前年度比プラス3.2%から、こちらも、土地投資額を含むベースの計画と同じく大幅な上方修正となっている。2022年度のGDPの設備投資は、企業活動を取り巻く環境次第という面はあるものの、企業の投資意欲は強く、しっかりした増加が期待される。

機械受注は設備投資の先行指標として知られている。機械受注(船舶・電力を除く民需、以下、除船電民需と表記)とGDP統計の名目・民間企業設備投資との時差相関係数を、2005年10~12月期から2022年1~3月期の66四半期のデータで計算すると、2四半期先行した機械受注(除船電民需)と名目設備投資の間では0.8027、1四半期先行では0.8421、同期では0.8396である。1四半期先行のケースが最も相関係数が大きい。機械受注(除船電民需)の直近の動きをみよう。

5月分は前月比減少でも、内閣府基調判断は「持ち直しの動きがみられる」

機械受注(除船電民需)の5月分の前月比はマイナス5.6%と3カ月ぶりの減少になった。4月分の前月比がプラス10.8%と3月分前月比プラス7.1%のあとでも2ケタ増だった反動があり、5月分前月比が減少となったとみられる。

大型案件は、前回4月分では、製造業の非鉄金属で3件(その他重電機1件、原子力原動機2件)だった。5月分では、製造業の造船業で1件(内燃機関1件)にとどまった。

5月分製造業の前月比はマイナス9.8%と3カ月ぶりの減少になった。5月分の製造業では17業種中、工作機械、運搬機械などのはん用・生産用機械や、内燃機関、工作機械などの造船業をはじめ全部で8業種が増加した。一方、電子計算機等、通信機などの電気機械をはじめ全部で9業種が減少した。

5月分非製造業(除船電民需)の前月比はマイナス4.1%と3カ月ぶりの減少になった。電力業を除く非製造業11業種中、5業種が増加で6業種が減少となった。建設機械、電子計算機等などの建設業などが増加に寄与した。一方、鉄道車両、電子計算機等などの運輸業・郵便業などが減少に寄与した。

機械受注(除船電民需)の3カ月移動平均は前月比プラス3.7%と2カ月連続の増加になった。また、前年同月比はプラス7.4%で14カ月連続の増加になった。

内閣府の基調判断は2022年2月分・3月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断であった。しかし、4月分では、3カ月移動平均の前月比が3カ月ぶりに増加したことなどで「持ち直しの動きがみられる」に判断が4カ月ぶりに上方修正された。5月分では前月比は減少しても、3カ月移動平均の前月比が2カ月連続増加したことで、「持ち直しの動きがみられる」の判断が継続となった。

4~6月期の機械受注(除船電民需)は前期比プラス7%程度の増加を予測

機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比見通しはマイナス8.1%である。ウクライナ情勢、それに影響を受けた原材料高に加え、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた上海のロックダウンなどから企業が先行きの設備投資に慎重になったことが背景とみられた。

しかし、4月分・5月分の実績は全体的に事前予想よりもしっかりした内容になった。特に、大きな要因があったわけではないということだが4月分が前月比プラス10.8%と2ケタ増加となったあと、5月分は前月比マイナス5.6%の減少にとどまった。

このため、6月分の前月比がマイナス45.1%の大幅減少でも、4~6月期の前期比見通しマイナス8.1%は達成される。6月分の前月比がマイナス22.0%なら4~6月期の前期比は0.0%になる。6月分の前月比がマイナス10.0%でも、4~6月期の前期比はプラス4.2%の増加になる。6月分の前月比が0.0%なら4~6月期の前期比はプラス7.8%の増加になる。

日本工作機械工業会のデータなどをもとに、機械受注(除船電民需)6月分を暫定的に予測すると、前月比マイナス1.8%程度になるとみられ、これに基づく暫定的な予測では、機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比はプラス7.1%程度の増加、コロナ前の2019年4~6月期以来の水準になろう(図表)。

機械受注(除船電民需)の推移
※季節調整値
出所:内閣府

2022年6月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比はプラス31.3%と5月分プラス48.9%から伸び率は鈍化するものの、16カ月連続の増加で、しっかりした伸び率になっている。