特別対談 地域創生を推進する金融の役割
日本経済にとって地域創生は重要なテーマの1つである。地域経済が抱える課題や金融の役割について、金融庁の石田晋也氏と、日本政策投資銀行(DBJ)の地下誠二氏に、地域共創ネットワークの坂本忠弘氏が話を聞いた。
金融庁
総務企画局 総務課長
石田 晋也氏
日本政策投資銀行
常務執行役員
地下 誠二氏
地域共創ネットワーク
代表取締役
坂本 忠弘氏
※地下氏は2018年6月28日付けで取締役常務執行役員に就任。
① 地域経済の課題と金融機関の対応
外部からの誘致に頼らず地域の企業による産業振興を
坂本 地域創生を進めるうえで大きなカギになるのは、それぞれの地域性やプレイヤーの個性をどう生かしていくかだと考えている。DBJのレポートでは、地域経済の振興策として外部からの企業誘致や公共投資に頼るのが限界を迎えていることを指摘しており、地域が持つさまざまな資源を用いて地域経済の活性化を目指す、内なる産業振興が重要だと述べている。そのためには金融機関の役割も重要で、地域での事業の連関や集積を考えたアプローチが求められるほか、資金の出し方についても従来のシニアローンだけでなく、メザニンローンやエクイティを含めた多様な手法を使えるのが望ましい。DBJでは具体的にどんな取り組みを行っているのか。
地下 企業を誘致することは地域経済にとって確かに良い効果を生むが、いまだに多くの人が想定しているのが、大きな工場をつくればまとまった雇用が生まれ、新しいバリューチェーンが生まれるということだ。最近は工場も合理化が進んでいるため、かつてほど大きな雇用は生まれにくくなっている。大企業を1社呼ぶために補助金を付けることは、地域経済にとって必ずしも実効的とはいえないのが現実だ。一方で、地域に根付いている企業はあまり重視されない傾向がある。地域創生を考える際には、地域の企業をもっと大切にすべきではないかという問題意識を持っている。例えば福井県の繊維産業や富山県の製薬のように、地域にすでにある産業を生かし、発展させることが重要なのではないか。
金融に関しては、地域の中核企業は借金が比較的少なく、借り入れに困っていない場合が多いため、DBJでは手元の余剰な資本をうまく使おうという提案をしている。具体的にはM&Aサービスの提案や、議決権がない種類株を通じた共同出資などを行っている。種類株を発行すれば自己資本が充実するため、地元のメインバンクにとってはM&Aなどに向けた融資を行いやすくなる。このように地域金融機関と、エクイティを提供できるDBJの特質をうまく組み合わせた金融サービスを提供する事例が増えている。
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