資産運用業界は、プレーヤー同士の合併が続く一方、幅広い投資家ニーズに応えるための商品開発や運用パフォーマンス競争が激しい。近年は、インベストメントチェーンを支える機関投資家としての役割も注目を集めている。野村アセットマネジメントCEO 兼 執行役社長の渡邊国夫氏に、同社の経営戦略を聞いた。(取材日:2017年10月10日)

野村アセットマネジメント CEO 兼 執行役社長 渡邊 国夫氏
野村アセットマネジメント CEO 兼 執行役社長
渡邊 国夫

運用ニーズが見込める商品を異なる拠点間に「横展開」

国内外の他の資産運用会社との違いは。

渡邊 キーワードは「事業分散」だ。全体の収益構成をざっくり言うと、約4割を国内リテールが占める。残りは年金基金などのホールセールで、うち3分の2が国内、3分の1が海外だ。

リーマン・ショック後は不透明な経済環境が続いており、特定分野に絞った事業ポートフォリオでは収益変動リスクが大きい。公募株式投資信託の比重が高いと、金利環境や売れ筋商品の有無で収益が大きく左右される。国内のリテールと海外を含むホールセールそれぞれにバランスよく足場を築いていることは、現状では大いなる優位性と考える。

資産運用事業は、基本的にはグローバルビジネスだ。投資家の需要に応えられる仕組みならば、国内と海外、リテールとホールセール、それぞれの垣根を超えて受託できるといえるだろう。当社は米国、欧州、アジア・オセアニアなどに9つの営業拠点を持つ。この海外ネットワークを生かして、ニーズが見込める商品を異なる拠点間に「横展開」できるのも当社の強みだ。

目指す資産運用会社像では「特色あるアジアの運用会社として、最高の付加価値の創造に挑戦する」を掲げている。

渡邊 足元では国内の公募投資信託が好調だ。日本がホームグラウンドであることに変わりない。ただし、今後はそこから一歩進み、経済成長著しいアジアに本拠を構える資産運用会社と自社を定義づけ、リテール、ホールセールとも海外の比率をさらに高めていきたい。

リテールは各国で規制や商慣行が異なるため、現地拠点の有無がポイントになる。2014年に外資系金融グループの台湾子会社を買収して、日本の資産運用会社で初めて台湾に拠点を持ったように、現地拠点網の充実を図っていく。

一方、ホールセールは各国の中央銀行や大手ソブリンウェルスファンド、ファミリーオフィスとのつながりがカギとなる。既存の運用手法のパフォーマンス向上に努めつつ、スチュワードシップ(対話)活動にも力を入れていきたい。

金融庁による一連の改革の結果、資産運用会社は、一機関投資家として独立した判断に基づく議決権行使が求められる時代になった。

渡邊 企業が中長期的な価値向上によって利益を拡大し、それに伴う配当や賃金の上昇が最終的に家計にまで還元されるという一連の流れをインベストメントチェーン(投資の連鎖)と呼ぶ。

近年の様々な金融改革の原点は、日本でインベストメントチェーンをいかに構築するかにある。我々の議決権行使の個別開示について大手で先陣を切ったなどと言われるが、開示内容はその時点の企業統治状況に対する判断に過ぎない。大事なのは、機関投資家として日本のインベストメントチェーンにどう参画するかという問題意識だ。この視点に基づき、企業と建設的な対話を深めることが、インベストメントチェーンを巡り巡って、資産運用会社としての当社の運用パフォーマンス向上にもつながると見ている。

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