長引く超低金利などを背景に、複数のアセットクラスや運用戦略を組み合わせる「マルチアセット」に投資する年金基金や金融法人が増えている。投資家ニーズを踏まえて進化し続けるマルチアセットの現状や新たなトレンドなどを紹介する。(工藤晋也、佐々木恵理)
説明責任と透明性のニーズに応えるクオンツタイプが日本の主流
複数資産間で機動的に資産配分を行うマルチアセットは現在、大きく3つのタイプに分けられる(図表)。定められたモデルやルールに従って投資判断をする「クオンツ」と、ファンドマネジャーがマクロ環境などの見通しに基づいてアロケーションを行う「ジャッジメンタル」、そしてクオンツとジャッジメンタルを融合した「ハイブリッド」だ。
日興アセットマネジメント プロダクト・スペシャリスト部共同部長 兼 機関投資家営業戦略企画部長の田﨑敬浩氏は、「日本ではクオンツタイプが主流」と話す。とくに金融法人では説明責任や投資プロセスの透明性が強く求められるため、「ルールベースで運用するクオンツタイプはニーズに合う」(田﨑氏)からだ。
ただし、クオンツタイプが世界的なトレンドというわけではない。シンガポールをはじめとした国々では、定性的な判断を加味したタイプが評価されるなど、地域差もある。その理由について田﨑氏は「機動的な定性判断によって運用するジャッジメンタルやハイブリッドタイプのほうが下方リスクに対する高い抑制効果が期待できるから」と指摘する。
もう1つのトレンドは、アウトカムタイプのマルチアセットだ。「アウトカム」とは、例えば絶対収益やインカム確保など、投資家の最終目的に沿った運用成果を目指すタイプと定義づけられることが多い。アクティブ、パッシブ、オルタナティブといった運用スタイルや、ESG(環境、社会、ガバナンス)などの概念も織り交ぜながら、年金基金や金融法人のそれぞれの運用方針の実現に最大限応えることを目指す。
野村アセットマネジメント 運用部マルチアセット&ソリューションズグループCIO(最高投資責任者)の川原淳次氏は、「欧米ではすでに広がりつつあり、日本でも今後の主役になるだろう」と見ている。
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