豊富な研究資金を確保する海外大学との競争や少子化に伴う財源確保のため、大学の資産運用の重要性が叫ばれている。その裏には既に、寄付金を主な財源とした「エンダウメント(基金)」という独自の運用体制の下、少しでも高い利回りを追求しようと努力する担当者の姿がある。大学基金の運用担当者や有識者の声を通じ、教育法人の資産運用戦略と今後の展望について概観する連載「大学基金の資産運用」第2弾。第1回では北里研究所(北里大学)の資産運用を統括する財務担当常任理事の佐々木敏彦氏に、同大学独自の工夫が凝らされた運用方針について聞いた。

「現代ポートフォリオ理論」は必ずしも全ての大学にとっての最適解とは限らない

北里研究所 財務担当常任理事 佐々木敏彦氏
北里研究所
財務担当常任理事
佐々木敏彦

多くの大学と同じく、元本の毀損をリスクと考えて債券を中心に資産運用を行ってきた北里大学。低金利環境で研究や奨学金の原資となる第3号基本金の運用益の確保が困難になったことを背景に、資産運用の強化に乗りだしたのは2018年のことだった。

元バークレイズ投信投資顧問社長の佐々木敏彦氏や元全労済資金証券部長の沖忠美氏を迎え、継続的に運用方針の見直しや資産運用体制の整備を進めてきた。そうしてたどり着いたのが、まず大学として覚悟することのできる損失金額を決め、統計的に計算した最大損失見込額がその範囲に収まるようにポートフォリオのリスクの上限を定め、その枠内でリスク分散を図りつつリターンの最大化を目指す、という現在の運用の枠組みである。

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