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マクロ経済 ウクライナ危機が高インフレに追い打ち。景気後退の悪循環への懸念
感染症と紛争が世界の分断を加速
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻してしまった。ほんの数週間前まで、専門家もこの最悪シナリオが実現化するリスクはかなり低いとみていた。合理的に考えれば、ロシアが失うものが大き過ぎるからだ。今後の展開は予断を許さないが、第2次世界大戦後の世界の秩序は崩れた可能性がある。
米国の政治学者フランシス・フクヤマが1989年に発表した「歴史の終焉」は既に間違いであったことを本人すら認めているところだが、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックと2022年のロシア・ウクライナ紛争で「新しい歴史」が始まった可能性が高い。
時代の変化は、経済の側面でも起きつつあるかもしれない。今はまだコロナ危機からの回復期にあることから、早々に世界経済が腰折れする可能性は低い。しかし、主要国の財政拡張や金融緩和が終了した後でも自律的な成長ができるのか、仮に地政学リスクがなかったとしても心許ないところがあった。世界的に少子高齢化や投資不足に伴う生産性の伸び鈍化が中長期的な成長を抑制していたからだ。地球温暖化や格差拡大への対応といった世界経済が抱える課題を技術革新によって解決する過程を成長の源泉とする逆転の発想を期待したいところだが、世界の分断は今回の戦争で一層悪化してしまい、協調した成長の加速は期待しづらくなってしまった。
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